制度ありきの事業スタートでは失敗する

住所地特例という制度をご存知でしょうか。

老人ホーム認定を受けた住宅に転居すると、転居前の自治体がその転居者の医療・介護費用を払い続けるという仕組みです。

これがあるおかげで、特別養護老人ホームなどを作っても、建物のある自治体は扶助費の負担がなく、雇用と消費を創出できるというメリットがあります。

これをアクティブシニアにも適用しようというのが生涯活躍のまちで多くの自治体が取り組もうとしていることです。

アクティブシニアであれば、消費はさらに増えますし、地域で活動をするので、地域のにぎわい創出にもつながります。

良いことづくめだということで、本来であればアクティブシニアの奪い合いが生じるというものだと思います。

しかし、実際はそのような現象は起きていません。

それはなぜか。

理由は簡単で、老人ホーム認定を受けた住宅というのは、老人ホームのサービスの提供が伴いので、アクティブシニアにとっては不要のサービス提供であり、不要なサービス費を支払うことになるからです。

世の中の老人ホームというのは、介護を必要とした人が住む住宅なので、緊急通報装置をつける必要があったり、介護の資格を持ったスタッフが常駐しなくてはいけなかったりと要件も定められています。

このような縛りがある中で、元気な人に暮らしてもらおうとするとミスマッチが起きるのは当然ですね。

制度とのミスマッチをいかに解消するか

ただ、一度進めてしまった事業はなかなかやめることができません。

これを解決する方法は3つです。

1つは、住所地特例の適用をあきらめる。

一般の住宅で十分と考える人は多いので、空き家などの住宅を紹介するというのは良い方法だと思います。

実際、多くのシニアがそのような形で移住しています。

2つめは、アクティブシニアの移住をあきらめる。

東京は介護難民ということが危惧されているので、介護が必要な人向けの住宅を整備して、住所地特例の適用住宅に転居してもらうというのはあると思います。

もちろん、介護スタッフの確保をどうするかという課題は残りますが、それはまた別問題ですね。

3つめは、アクティブシニアが住みたいと思える老人ホームにする。

実は、アクティブシニアが住みたいと思える老人ホームというのは以前からありました。

ただ、それはかなり高級なんですね。

地方にも高級老人ホームを建設することはできますが、買い物や利便性よりも環境が良いところを選ぶという人がどれほどいるかというのが未知数で、なかなか大きな投資をするには至らないというのが実際のところのようです。

そうなると、ハード面ではなく、ソフト面でニーズに合ったものを提供するということになると思いますが、このニーズの照合というのがようやくできてきたところです。

一つは、いつ介護が必要になるかわからないから、という不安を解消するというニーズがあります。

このニーズを持つのは70代半ば以降の方々ですね。

もう一つは、移住先になじめるか、という不安を解消するというニーズがあります。

こちらは少し年代は下がりますが、ずっと老人ホームに住み続けようというよりは、1~2年地域になじむまで老人ホームで過ごして、地域を知って、良い転居先が見つかったらそちらに移るというものになるのではないかと考えています。

3つ目として、収入を得る環境を得たいというニーズがあります。

老人ホームはお金を払って入居するものですが、入居者がサービスの受け手ではなく、担い手になってしまおうという試みです。

そうすることで、サービス費を払った以上の金額を稼ぐことができるようになり、安定した収入を得ながら移住生活ができるという環境を得ることができます。

2つ目、3つ目のニーズについては、現在ホシノマチ団地で取り組んでいる中で見つけ、取り組んでいるところなので、確実というものではありませんが、実感として感じているところです。