行政

若い世代が地域活動をするために自治体職員ができること

どの自治体も共通に抱える悩みがあります。

それは、若い世代が地域活動に入ってこないことです。

市民参加の機会を設けても来るのはいつも決まっていて、定年後の世代がほとんどというのが定番ではないでしょうか。

どうにか無作為抽出でいろいろな世代に来てもらおうとしても、そのあとが続きません。

市民向けのまちづくり講座を実施しても、学生は卒業するといなくなるし、20代~30代の働いている世代に来てもらいたいと思ってもなかなか来ない。

来てくれたとしても、続かない。

どの自治体でも抱えている課題だと思います。

なぜ、20代、30代は地域活動に関わらないのか。

その理由は明確です。

一つは、お金にならないから。

もう一つは、面白くないからです。

20代~30代はお金を稼ぎたい世代です。

仕事であれば、お金は稼げますし、面白いことができているかもしれません。

この二つが両立してできている状況の人が、地域にさらに何かを求めようとはしないのは当然かと思います。

世代が高くなるとお金の部分の比重が低くなるので、余裕が出てきて、地域に入る人が増えてきます。

また、20~30代でもお金にはあまり関心がない、また仕事があまり面白くないので、地域に目が向くということもあると思います。

しかし、そこで行政のイベントに参加した人がその後長続きするかというと、そうでもありません。

それはなぜか。

その理由は、職員が仕事として関わっていることにその原因が見られます。

一つは、仕事として関わっているので、異動して担当を外れるとその活動には参加しなくなることです。

地域活動は人と人との関係性なので、人が変わるとコミュニティの在り方も変わりますし、面白みもなくなったりします。

そこをあまり意識せずに異動したのであまり顔を出せなくなるんですとなってしまうとそれまで参加していた市民まで冷めてくるんですね。

もう一つは仕事として関わっているので、お金をもらって参加しているからです。

市民はお金をもらわずボランティアでやっています。

一方で職員は有給ですし、土日の場合は休日手当が出たり、時間外手当が出たりしています。

そうなると、一緒にイベントをやろうとなって、一緒に準備をしていても、片方はボランティアで片方はお金をもらってやっているとなってしまっていて、対等な立場になりにくいということがあります。

行政としてはお金をもらって場を提供しているという考えもできますが、場を提供する立場の人がお金をもらわずに活動する人の気持ちがわからないとうまくはいきません。

かといって職務としてその仕事をしないわけにもいきません。

そこで、若い世代が地域に関わり続けるために職員としてできることをいくつかあげたいと思います。

もちろん、市民の主体性が重要なので、市民がすべて自分たちでやるべきだというのは、理想的で、美しく見えます。

しかし、それは理想であって、現実的ではありません。

というのも、市民はボランティアでやっているので、割ける時間は限られますし、モチベーションが維持できる時間も限られます。

何よりも家庭や仕事のような優先順位の高い事項が大変になってくると、すぐに後回しになってしまいます。

私が考える職員ができることとしては以下の4点です。

1つは事務的な負担の軽減です。

行政職員にとって文書を作ることは当たり前ですが、市民にとっては文書を作るというのがハードルだったりする人が多いです。

考えてみると、営業ばかりしている人は、コミュニケーション能力は高いですが、文書を作る機会というのは比較的少なく、そういう作業を苦手としている人も多いような気がします。

行政職員はみんな筆記試験に通って、そのような能力が一定以上ある人の集まりなのであまり意識しないかもしれませんが、事務的な作業を手伝ってもらえるというのは大きな強みです。

2つ目は、人的ネットワークの提供です。

自治体職員は地域のスペシャリストです。

うちの自治体にはそんなに魅力は多くないと考える人も多いかもしれませんが、その多くない魅力をしっかりと把握できているのは職員の強みです。

また、新たに地域に関わる人にとっては、ほかにどのような人たちが活動しているのか、また地域にはどのような資源があるのかということを知りません。

そのような人や場所を紹介してもらえるというのは、非常にありがたいことです。

3つ目は、活躍する機会の提供です。

たとえお金にならなくても、行政が実施するイベントへの出展の声をかけたり、チラシづくりを依頼したり、どこかで講演してもらったり、これをしたいという活動がない人でも、何かしら自身が活躍できる場が提供されるとそれがきっかけでやりたいことが見えたり、グループとしてのまとまりが出たりということがあります。

すでにある活動は広報やホームページで出しているから知っているだろうというのは行政側の思い込みです。

市民は全く情報を知りません。むしろ、情報があることを知らないので、情報を取りに行こうともしていません。

そこで、職位が既存の行政の取り組みへ参加するよう声をかけるだけで、活動のフィールドが広がるので、そのような機会を提供できるとさらに一歩進んだ展開が期待できると思います。

4つめは、最も期待できないところだと思いますが、財政的な支援です。

活動をしたいと思ったときに不足するのは、人、物、金、情報のいずれかで、これらを提供というのがこれまで言いたかったことになりますが、金というのは財政が厳しい行政ではなかなか難しいと思います。

ただ、そこは情報の部分にも近くなりますが、財団等の補助金情報や協賛企業探しなどの部分で協力をするという方法もあると思います。

予算組をして、それを充てるということ以外にも工夫の余地はあるのではないでしょうか。

活動は、鉄は熱いうちに打てという言葉がある通り、早ければ1か月、長くても3か月程度で何も成果が見えないとしぼんでいくと思います。

場を提供する側としては、期限を定めて目標やハードルを設定し、それを乗り越える小さな成功体験を連続させることを意識すべきだと考えています

行政の事業だとまち全体や地域全体を考えることが多いので、出てくる取り組みや意見も規模の大きなものになりがちです。

そうなると、すぐに実現するのが難しく、1年ぐらいの計画でとなりがちなのですが、そういった時も1か月後にはこれ、2か月後にはこれというちょっとした目標もしくはチームとしてまとまることができそうなイベントがあったりするとモチベーションも保ちやすくなります。

行政職員はそのような市民のモチベーションマネジメントをするような意識でやっていけると職員としても楽しめると思いますし、市民としても気持ち良く活動できるのではないでしょうか。

 

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