日野市の財政がやばいということで、非常事態宣言を出しました。
ぱっと見て、これに違和感がありました。
その理由について、考えてみたいと思います。
[box class="yellow_box" title="日野市非常事態宣言のお知らせ"]
令和2年度予算において、税制改正などに伴う市税収入の悪化や、会計年度任用職員制度への移行に伴う歳出予算の増加などを受け、大幅な財源不足が発生しました。
今後、歳入予算は減少、歳出予算は増加していくことが見込まれる中、これまでと同様の財政運営では、真に必要な行政サービスの提供が困難になると予想されます。
このことから、将来に渡り、持続可能な財政運営を続けていくため、財政非常事態宣言を行うこととしました。
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日野市非常事態宣言の詳しくはこちらをご覧ください。
挙げている原因への違和感
そもそも、歳出が増えた原因が
・税制改正などに伴う市税収入の悪化
・会計年度任用職員制度への移行に伴う歳出予算の増加
の2点を挙げているのですが、これらの制度変更は他の自治体も同じです。
なぜ、日野市だけが非常事態宣言をしなくてはいけないのでしょうか。
また、2つ目の会計年度任用制度への移行については、3年前の2017年の法律改正ですでにわかっていた情報になります。(参考資料:総務省 会計年度任用職員制度について)
もう少し早く対策もできたのではないでしょうか。
市民にうったえることへの違和感
次に感じたのが、財政が危機であるということは、市民に言うことなのか、ということでした。
市の財政を預かるのは行政で、その財源は職員によって運営されています。
予算については議会の議決が必要なので、首長、議会、行政職員で決めていると言って良いでしょう。
もちろん、首長、議会、行政職員は市民の声を聞いて運営をしているので、市民が税収以上のサービスを要求しているとしたら、将来のことを考えない過剰な起債(借金)による行政運営をする可能性もなくはありません。
しかし、実際、そんな市民はいるのでしょうか。
しっかりと理由を説明すれば納得をしてもらえると思います。
この宣言に見え隠れするのは、そのような市民へ状況を一つ一つ伝えるのは大変なので、宣言という一方的な発信によって簡単に済ませようという思いのような気がします。
具体的な取組に対する違和感
この財政危機から打開するための具体的な取組として、以下の4点が記載されています。
[aside type="boader"]具体的な取組
(1)市長、副市長、教育長の報酬の減額
(2)日野都市計画道路3・4・24号線道路整備事業における主要工事の休止
(3)職員の働き方改革の推進による時間外手当の削減
(4)市負担が大きい事業を中心とした既存事業の見直しによる経費削減
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(1)は市民生活に関係ありません。
(3)はなぜ今までやらなかったのかというレベルの話です。
(4)は具体性がなく、何も伝わりません。
ここから伝わるのは、(2)をやりたくて仕方がないので、この宣言をしたということではないでしょうか。
ようやく明らかになりました。
この宣言の意図は、日野市が(2)をスムーズに行おうということだったようです。
通常、このような事業を休止するには、市民説明会をしたり、ステークホルダーに説明することを行ってから決定をすると思いますが、宣言という形であれば、1回の発信で終わらせることができます。
今後の状況を見てみないとわかりませんが、私としては、このような宣言で関係者が納得するはずがないので、結局説明会はこれから実施していくことになるのではないかなと思います。
そうなると、ますますこの宣言の意味はなんだったのかということになってしまいます。
効果に対する違和感
Q.この宣言を見た市民が思うことは何でしょうか。
- 大好きな日野市が危機的状況だ。助けないと。
- そうなんだ。大変そうだな。
- 日野市やばい。他の地域に住もうかな。
選択肢としては大きくはこんな感じでしょうか。
市としては①と②が多いのではないかと予想したのだと思います。
確かに、市の財政状況が悪化したからといって生活への影響が如実に見られるわけではありません。
少し前には夕張市が破綻して市民サービスが極端に削られた例がありますが、知っている市民も少ないでしょう。
財政の危機を知ったからと言って急に③の行動をとる人は少ないかと思います。
また、悪意的に解釈すると、現段階で宣言をしておけば、いざ破綻をして市民サービスが大幅に削られても、この時に危機宣言を出したのに市民のみなさんが協力してくれなかったからこのような結果になりましたという言い訳にも使えます。
どうすれば良かったの?
ここまで散々日野市の財政非常事態宣言について否定的な見解を述べてきました。
私はこの宣言を行ったことを良くないと言っているわけではありません。
そのままの宣言でも、市民から反発の声を受けることはほとんどないのではないでしょうか。
ただ、反発の声があがってこないとともに、応援の声もあがってこないのではないかと思います。
では、どうすれば良かったのか。
たぶん1つ、足りなかったのだと思います。
それは、最後に「日野市は非常事態です。だから、ふるさと納税をお願いします。」とリンクをはっておくことだったと思います。
宣言という手段を取ったので大きなインパクトがあります。
この点では日野市は良い手段をとったと思います。
日野市は絶対に人に見せてはいけない 日野市の職員手帳の時もそうですが、PR力はあると思います。
しかし、そのPR力が目に見える成果にする力が少し足りないのだと思います。
もし、この宣言の最後に「この非常事態を乗り切るためにはみなさんのご協力が必要です。ぜひふるさと納税をお願いします。」と書いてあれば、かなりのふるさと納税が集まったのではないでしょうか。
もちろん、これは市民向けに発信していることだと思いますが、SNSの時代ですので、日野市以外にも簡単に広がります。
また、日野市にかつて住んでいた人などにも届くと思います。
そのような人たちから支援を受ける大きなチャンスだったと思います。
これは、日野市が多いと予想している。①と②の層の応援を受けることにもなるのではないでしょうか。
今後、他の自治体の方で財政非常事態宣言を行おうと考えている場合は、ふるさと納税のリンクを貼ることをお忘れなく。
ちなみに、日野市のふるさと納税はこちらです。