行政

公務員が知っておくべきビジネスの基本

自治体職員から民間企業、起業と経て、今は自治体と一緒にまちづくりを進めています。

そういう中で、自治体職員のままだと決して身につかなかっただろうことを学んでいますし、ここは知っておくと公民連携を進めていく上で大切ではないかという基本について記したいと思います。

1.タイムイズマネー

言葉の通りですが、これはなぜかという理由を認識しておくことが大切です。

一つは時が経てば経つほど人件費などのコストがかかります。

たとえば、報告書の締め切りが1か月遅れると、その1か月分人件費が無駄に出るわけですね。

また、最近は技術的な進歩が速いので、最先端の取り組みをしていても、数か月経つと他の地域でも実施しているということが多くあります。

日本初というのは大きなインパクトを持ちますが、数か月遅れたためにそれを他の地域に奪われてしまうと広告料的な部分での損害が大きいです。

2.継続には儲けることが必要

お金を稼ぐことに対して、儲けることに対して罪悪感や抵抗感がある人も多いと思いますが、公務員も給料としてお金を稼いでいます。

公務員と民間は稼ぐ目的が違うというかもしれませんが、そういった区別をすること自体が少し問題で、民間がお金を稼ぐ目的は私腹を肥やすためではありません。

民間がお金を稼ぐのは、そのお金を使ってさらに投資をするためです。

民間はリスクをとって事業を行っているので、常に新たな投資をして、リスクを分散する必要があります。

リスクを分散できないビジネスというのは、リスクでしかないので、取り組むことはできませんし、そもそもそれはビジネスではなくなります。

では、それを担えるのは誰かというと、ボランティアです。

ただ、ボランティアになると、個人に依存することが大きくなります。

それは、担えるのがお金を気にせず、思いだけで実施することができる人に限られるからです。

これは、その人がいなくなると継続できなくなるというリスクが出るため、事業を継続するにはボランティアに依存することはできませんし、民間が担えないとなると行政が自ら行う覚悟が必要ということになります。

もし、行政が担えないのであれば、民間がリスクをとれるだけの支援をする必要があります。

3.計画通りに進むビジネスはない

将来を予知できる人はいません。

何があっても計画通りに進めるというのは、信義にのっとっているようで、それで税金を無駄にしたら国民を裏切ることになります。

もちろん、計画通りに進められて、ビジネスとしても成功すれば最高ですが、社会環境の変化が激しい状態で、実現するのはほぼ不可能といえると思います。

国民もその点は理解する必要がありますし、行政もビジネス分野においては計画変更について柔軟性をもって取り組む覚悟が必要だと思います。

優先すべきなのは、言ったことを実施することではなく、言ったこととは異なっても、最終出来に成果を出すことだと思います。

4.ビジネスはキャッシュフローが命

キャッシュフローというのは、資金繰りのことです。

お金は持っている金額以上を使ってしまうと倒産です。

たとえ、1か月後に1億円入ってくる見込みがあっても、今日1円の借金が返せないと倒産になります。

民間企業として最低限守るべきラインはここです。

そして、それを死守しつつ、どれだけ利益を上乗せできるかが重要なわけで、この利益の額をどの程度ほしいかと民間企業に聞くのはナンセンスです。

民間側が言った金額をそのまま出せるのであれば問題ありませんが、財政状況が厳しい中ではまず無理だと思います。

金額については、どれだけの利益の見込みがあればどれだけのリスクがとれるかというのが判断基準になるわけですが、民間企業はこの点を自分から出すことはありません。

既存のビジネスの事例を勉強したり、ケースを想定することで、想定できるとベストですが、ここまで求めるのは厳しいかもしれませんね。

ただ、キャッシュフローの流れを理解する上で損益計算書と貸借対照表は見られるようにしておいた方が良いと思います。

書いてある数字だけを見るのではなく、その数字の根拠がどのようになっているのかと知ることが大切です。

もし、民間側でそれを作っているのであれば、根拠を突き詰めていくことで、いろいろわかることがあるはずです。

そもそも民間側で作らないという時もあるかもしれませんが、そのような会社は信頼でいないのでたとえ大企業だとしても相手にしない方が良いと思います。

 

最後に、民間経験者といっても、全員が上記のことを経験しているわけではないということも注意が必要です。

これまで、民間経験者が重視されてきたのは、スピード感やサービスの質といった民間企業で働く上での勤務態度の面がほとんどでした。

私がここで述べているのは、ビジネススキルの部分になってきていて、営業や接客しかやっていない人は身に着けていないことがほとんどだと思います。

勤務態度の改善を目指していた時代の行政であれば、どのような分野の人も民間であれば経験が活かせますが、この部分については経営企画などに取り組んだ人でないとなかなか身に着けるのは難しいかもしれません。

これらのスキルは、公務員では学ぶことができないビジネススキルになります。

なぜ公務員では学ぶことができないかというと、公務員はお金を使い切ることを業務としているからです。

新たな投資をするために収益をあげようという考え方もすることはほとんどなく、ふるさと納税についても収入を増やそうという思いはあっても、そのお金の使い道は新たにお金を生み出す事業というよりは、人口を増やしたり、生活満足度を上げて人口流出を抑制したりという間接的に税収を増やすだろう事業になっています。

そうなると、税収の増加の見込みなどを立てることが難しいですし、評価もしにくくなってしまいます。

ここで言いたいのは、そのような事業を行うことが悪いというのではなく、民間とは違って、お金で評価できる事業をしないのが行政の特徴なので、民間独特のビジネススキルを身に着けるのは難しいという話がしたかっただけです。

収益を上げてビジネスを継続するのは民間の役割だからと公民連携でお任せしてしてしまおうというのもよいのですが、すべてお任せだと民間の言われるがままになってしまって対等な関係にはなれません。

民間としては行政職員がこのようなスキルを身に着けていると手ごわい相手になってしまうので、面倒になること必至ですが、あえて述べておきたいと思います(笑

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