まちづくりは時間がかかるもの。
関わっている人にとっては、当たり前でも、関わったことがない人にはわかりません。
世の中でまちづくりに関わったことがある人は2〜3割という中で、この理解を得るというのは非常にハードルが高いものです。
そのため、まちづくりに関心がない人たちは、自身に関心のあることに取り組んでもらって、その結果としてまちづくりに貢献しているというエンターテイメントとしてのまちづくりが有効だと考えてきました。
ただ、これではまちづくりに新たに関わろうという人たちを取りこぼしてしまいます。
せっかくまちづくりに関わろうと思ったのに、スピード感が遅く、成果が見えないから離脱する。
まちづくりには時間がかかるのが当たり前と思っている人たちと合わず、離脱する。
そういった状況はまだまだ起きています。
特に移住者は、地方に移住することがきっかけで、地域に関わろうとします。
しかし、そこで地域と合わなくて地域を離れるというケースを数多く見てきました。
そこで、地域のことを知っている通訳者、中間支援者をつくるという取り組みを行ったのがホシノマチ団地です。
常駐のスタッフが移住者と地域をつなげることで、移住入門者向け住宅としての機能を果たしています。
ここでのスタッフの役割は地域での関係性の構築といったところまでなので、たとえば移住者が地域の課題を発見して、その課題解決のために動きたいとなると、地域の人たちとのやりとりが必要になってきます。
そうなると、移住者と地域の人たちとの信頼関係の構築が必要になるので、この関係構築の時間というのが一定程度かかってしまって、いつの間にかあきらめるといったパターンになります。
まちづくりは正解が見えていることも多いです。
- 耕作放棄地が増えたら、活用した方が良い
- 空き家が増えたら、活用したほうが良い
誰もが正解がわかっているのですが、できない。
それは、信頼関係の構築に時間がかかるからです。
信頼関係の構築を高速化する方法
信頼関係を構築のハードルを下げる可能性があるパターンはいくつかあります。
- 行政事業として行うこと
- 地域の有力者の関係を活用すること
- 有名(人・企業)であること
あたりでしょうか。
行政事業として行うのは、それ自体が公的な事業であると考えられるので、ハードルは低くなります。
私は行政は信頼の付与が大きな役割の1つだと申し上げてきましたが、それですね。
2つめは、地域の有力者との関係の活用です。
商工会や観光協会のような公的機関の役職者もそうですし、地域の大きな企業、議員の方々などがそれにあたります。
地域では首長派とそうでない人がいるので、そこを間違えると大変なので注意が必要です。
そして、この手法の場合は首長が変わったら終わってしまうというリスクもあります。
3つめは有名であることですね。
実績があるなしにかかわらず、知っている人だと安心感が生まれるので、そこは大きなポイントかと思います。
実績があればそれは良いことですが、地域の人からすると、専門分野の実績はあまり説得力は持ちません。
専門分野で有名であることよりも、マスメディアに出ていて、知られていることの方がスムーズにいきやすいような気がします。
以上見てみましたが、地域で信頼のある人を頼るということが大切なのだと思います。
ホシノマチ団地では、常駐のスタッフが間に入ることで、この信頼関係の構築時間を短くしています。
新規参入者が入りにくい参入障壁という考え方
ビジネスとして実施するのであれば、早く儲からないと意味がないと考える人もいるかもしれません。
楽して早く儲かるというのが今の時代のトレンドなので、それに乗れないとビジネスとしての旨味はありません。
だからこそ、まちづくりが後回しにされて、地域が衰退するという結果が生まれているのだと思います。
ただ、見方を変えると、信頼関係の構築は一朝一夕にできないため、新たな参入者も入りにくい状態になります。
一度そのポジションを確立すると、入れ替わりにくいということです。
そういう考え方に立ってみると、ビジネスとしての寿命は長いという見方もできるかもしれません。
ビジネスというのは、その業種やビジネスモデルによって、収益化までの道のりというのは様々で、まちづくり分野だと収益化は遅い一方で、長期での回収が可能といった考え方ができると思います。
とはいっても、まちづくりを仕事にしたい人たちは、目の前の生活をするために稼ぎたいですよね。
その場合は、既存のまちづくりをしている仕事に入るのが一番かと思います。
そこで、地域に関わって、信頼を構築して、自分のビジネスを育てていく。
そもそもビジネスはすぐにうまくいくものではないですし、それができるのであれば誰も苦労しません。
この根本部分の覚悟がなければ、そもそもまちづくりに関わってほしいとも思いませんし、ビジネスをはじめることも控えた方が良いと思います。
なぜなら、まちづくりは地域が被害者になるからです。
何かをやってみたいと新しい動きをしても、それがうまくいかなければ、その人は去っていきます。
その人自身、うまくいかなかったことで残念な想いはあるでしょうが、地域はその失敗があったからといって、他へ移ることはできません。
地域の人たちは逃げ場がありません。
だからこそ、地域に関わるのであれば、その地域とずっと取り組む覚悟を持って関わる必要があると想いますし、時間がかかっても耐えられる状況にしておく必要があると思います。
継続し続けられれば、失敗することはありませんから。