まちづくり

移住者はなぜ地域になじめないのか。3つの理由とうまくいくケース

移住に失敗した。

というのは良く聞く話です。

それをなくそうと思って、移住者専用住宅のホシノマチ団地を作りました。

そして、移住の失敗はなくなりました。

失敗というのは、移住したけど、そこに住み続けられずに戻ってしまう状態のことです。

しかし、それがなくなると、住民からはさらに一段高い希望が出てきます。

それは地域の人たちと仲良くなりたいということです。

移住者と既存住民の壁をなくしたいという思いが出てくるのです。

気持ちはとても良くわかります。

これまで住んでいた人たちと、新しく入った人たちで分かれずに、差別なく暮らせたほうが気持ち良いですよね。

移住者が地域になじむ3つのハードル

しかし、それには大きな3つのハードルがあります。

それは、考え方の違いと信頼関係です。

考え方というのは、その人の興味関心なども含めて、どういった考え方をしているかということ。

その地域をどうしていきたいかというものもここに入ります。

たとえば、外から来る人たちは商店街がシャッター通りなのでどうにかしたいと思っていますが、商店街の住民は商売をやりたいと思っていないという考え方の違いというのはよくある話です。

どちらかというと、論理的、機能的な側面ですね。

もう1つの信頼関係は、その人が好きか嫌いかということですね。

考え方が一致していても、同じような方向性を向いているけど、なんとなく合わないといったところがある、感情的、情緒的な面での対立です。

まず、これらを合わせるためにいは、お互いが知り合う、話し合う、理解し合う機会をつくる必要があります。

最大のハードルは、それぞれの生活がある中で、またもともと住んでいた住民はそれまでの生活で満足している状態の中に、移住者が入ってきても、積極的に交流を持ちたいとは思いません。

分かり合おうという土台に立とうと思っているか、立つ必要があるかというのが根本的な問題です。

たとえば、とても景観が良い地域があって、そこを観光名所にしたいという人が来ても、地域の人たちが観光客には来てほしくないと言えば、話は進みません。

基本的に外から来る人たちは、自分のニーズで来ているので、地域のニーズとは合致がしないというのが最も大きなところです。

それを移住者が一緒に交流することが美しい、理想だからといって、それを求めても実現は難しいというのが現実です。

どういうケースはうまくいくのか

では、うまくいっている地域はどういうケースなのでしょうか。

それ、コミュニティのあり方に注目するのが良いと思います。

コミュニティはテーマ型コミュニティと地縁型コミュニティの2つに分かれます。

テーマ型コミュニティというのは、特定のテーマ、たとえば教育、スポーツ、環境といった地域活動のようなコミュニティです。

NPO法人などもそうですね。

地縁型コミュニティというのは、自治会、消防団のようなその地域に住んでいる人たちで構成されるコミュニティです。

もともと、日本では地縁型のコミュニティが強かったのですが、人の動きが激しくなる中で自治体などの地縁型コミュニティは衰退していき、最近はテーマ型のコミュニティが中心です。

なぜ地縁型のコミュニティが衰退したかというと、従来であれば、家族同士での関係性、顔と顔が見える関係性でのつながりだったものが、人の出入りが激しくなり、顔と名前が一致しにくくなったことに加えて、世代や興味関心がいろいろな考えの人たちが所属するため、会話がかみ合わない状態になっていったからです。

うまくいっている地域というのは、テーマ型のコミュニティの構成メンバーが地縁型のコミュニティの構成メンバーと重なっている状況が作られています。

関心が近い人たちが同じ地域で暮らしているという状態ですね。

移住で考えると、移住者は地域に何らかの関心があって集まってきています。

一種のテーマ型コミュニティと言えると思います。

そして、それが1ヶ所に集まっていれば、地縁型のコミュニティとなります。

このテーマ型と地縁型を一緒にしたのが前述のホシノマチ団地です。

移住者専用住宅とすることで、移住に関心がある人たちと地縁型のコミュニティでも活かしているので、ストレスなく過ごすことができる環境ができています。

移住は既存のコミュニティに入っていくこと自体が大きな壁

通常の移住について考えてみると、既存の地縁型コミュニティの中にポンと1組が移住します。

既存の人たちは昔からその地域に暮らしている人たちなので、その地域に関心があるわけでもなく、むしろ、東京に行ったほうが良いという人たちばかりです。

そこにこの地域が好きだという人が入ってきても、何でだろうと疑問に思ったり、物好きだねと思ったりする程度です。

そこで、なにか変わったことを始めると、あの人は何をしているんだ、怖いな、あやしいなといった見られ方をされていきます。

もちろん、上手い人はここで地域の人たちとあいさつをしたり、会話をしたりしてうまくなじめるのですが、地域の人たちの反応は概ねこのような形です。

地域の人たちの多くは、自分たちの地域の人口が減っても困りませんし、自分の子どもたちは東京に出ていった方が良いと思っています。

地域が衰退していくことに対してネガティブではありません。

そのため、多くの場合、人が移住してくることに対して歓迎はしません。

例外があるとすると、特定空き家と言われるような治安面で不安になる空き家が活用されるような場合や、住民が少ないので自治会費が値上がりしてしまって大変な場合ぐらいかと思います。

そんな中で、移住者が来て、地域の人たちと仲良くなりたいという理想を掲げても、需要のないところに物が供給されても売れないのと同じ状況かと思います。

地域の人たちがそれを望む状況を作らなくてはいけません。

既存のコミュニティから移住者が歓迎される状況を作るには?

では、どうすればそういった望む状況が作れるのか。

1つは、さらに時をかけて、治安、地域インフラの維持など地域で生活をすること自体が困難な状況になることを待つことでしょうか。

人口が減少する中で、自治体の地域への財政支援はどんどん減っていくと思います。

自分たちでなんとかしなくてはいけない場合は増えていくと、もっと人が増えれば良いのにという声も増えていくと思うので、それを待つというのがあると思います。

もう1つも、時間がかかる方法です。

それは、地域の人たちとビジョンを共有して、こういう地域にしていきたいという形を共感してもらうことです。

地域が悪くなれば良いという人はいないので、しっかりとしたビジョンを描けば時間はかかっても共感してくれる人は増えるはずです。

その中で、確実に否定してくる人はいますが、それで諦めずに継続することが大切です。

私は、この2つめの方法が好きで、というか、これをやらないと地域は動かないと思っています。

しかし、今の世の中では時間をかけて取り組むことを希望する人は非常に少ないというのが現実です。

すぐに成果をあげて、すぐに評価をされたい、そういう人たちです。

それが、都心のスピード感なので、当たり前です。

このミスマッチが、まちづくりへ関わる人の数を少なくしている理由だと思っています。

まちづくりの高速化がこれからの課題

まちづくりをよりスピーディーに行うためにはどうしたら良いか。

従来の方法をより高速にするというのは、これまでの取り組みのノウハウから可能だと考えています。

しかし、抜本的にスピードアップするためには、やはりまちづくりのIT化が必要だと思っています。

IT化というと、使い古されすぎた言葉で、古いかもしれませんが、まちづくり分野のIT化は非常に遅れています。

10年ほど前に地域SNSの取り組みが行われましたが、今では残っているものがほとんどなくなってしまいました。

この失敗というのが非常に残念なのですが、私はここに可能性があると考えています。

人の意思や感情をITで数値化して大きな流れを見える化する。

それができると、ぐっと進むと思うのですが、これについて取り組むのはもう少し先の話になりそうです。

できたら非常に楽しくなると思います。

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