定年とは何か。年金という安定収入を得る身分

定年後は働かず、悠々自適の生活を送るというのは、いつの時代からのことなのでしょうか。

かつて、隠居という言葉がありますが、家業を子どもにゆずって、それまでのお金で生活していくというイメージです。

戦前には民法上に定められていたようですね。

戦前は家父長制だったこともあり、肉体的、精神的な問題から家督を譲った方が社会として安定するというのはわかります。

また、定年というのは、戦前からもあった話のようで、戦後の大きな変化は年金ではないでしょうか。

戦後に国民年金が制度化されたので、そこから定年後の安定収入が約束された生活というのが始まったと言えます。

それまでは年金なしでどうやって生活していたのかが気になります。

年金がない時代の定年後の過ごし方

もちろん、自分で資金計画を立てて生活していたのですが、平均寿命の短さからそこまで深刻に考えなくても十分だったのだと思います。

また、生活水準も現在とは比べ物にならず、旅行などのエンターテイメントのための老後という意識も希薄だったと思われます。

定年後は家からあまり外には出ず、ひっそりと暮らすというがのスタンダードだったのではないでしょうか。

この背景には、人生は楽しまなくてはとか、つらい仕事はやらないというような考えが入る余地がなく、与えられた環境の中で精いっぱい勤めるといった考え方があったのではないかと思います。

これは、今も年配の方々の中には多い考え方で、団塊の世代以降になると、これに変化が見られてきます。

「不良老年のすすめ」という下重暁子という方の本が2000年に発行されていますが、1936年生まれの方らしいタイトルだと思います。

若いころに不良をかっこ良いと思っていたけど、できなかった。

年を重ねてもう恐れるものもないから、不良になってみよう、これまでやってこなかったことをやってみようという思いが感じられますが、これがこの世代にとっての尖った考えになるのだと思います。

団塊世代からは年金が当たり前

団塊の世代になると、成人前には年金制度が整えられます。

そのため、成人したら年金を納めるのが当たり前で、定年後は年金がもらえるという意識も明確に持っています。

そうなると、定年後の生活への期待も膨らんでくるわけで、定年したら働かなくても収入が得られるから、こういうことをしたいという思いを持つ人が多くいるのだと思います。

思わぬ落とし穴で、年金制度が人口増加と経済が伸び続けることを前提としていたものだったため、期待しているほど定年後に収入を得られないということがわかり、これからの世代としては年金への期待値というのが下がっているというのが現状です。

そして、年金制度のこのような問題も影響してか、定年後の年金よりも若いうちからやりたいことをやろう、楽しもうという意識の人が増えてきています。

考え方が、将来より良い生活ができるから頑張ろうというスタンスから、将来どうなるかわからないから、今を楽しもうというスタンスに変わっていると言えるかもしれません。

もちろん、今を楽しもうといっても、将来のリスクに対してしっかりと備えをしながら楽しんでいる人がほとんどです。

また、楽しみと頑張りを両立させて、楽しいことを頑張って、より良い将来につなげるという考え方が大きく取り上げられるようになってきています。

話は戻りますが、このように考えると、年金制度が整備された時から定年後は年金をもらえて、バラ色人生というような意識を持つ人が増えてきたということが想像できます。

そして、戦前から平均寿命が伸びたことに伴い生じたのが70歳、80歳でも元気な人が多くなったということです。

かつて60歳と言えば赤いちゃんちゃんこです、今そんな扱いをされたら60歳の人で怒らない人はいないのではないでしょうか。

そうなると、年金をもらう時期にはまだまだ元気で、楽しいことがたくさんできるという思いも持ちます。

ただ、これに伴って労働市場、企業は考えを変化させることができず、定年の年齢は段階的に高まって入るものの、存在し続けています。

このことが65歳以上の人が能力的に衰える時期なのではないか、リスクが高まる時期なのではないかと推測される制度的な根拠になっています。

だから定年の年齢を引き上げようという考えが出ているのだと思いますが、年金と定年というのは表裏一体の関係にあるような気もするので、年金も引き上げられるかもしれませんね。

年金の価値の変化とそれに伴う働き方の変化

私はここに年金としての価値の変化が起きてきていると思っています。

これまでは年金というのは、老後を安心して暮らすための貯金でした。

それが、老後生活するための資金の一部になってきています。

年金の受給額が引き上げられるとなるともらえるかわからないが、積み立てているお金とも認識されかねません。

そして、この年金の価値の変化とともに起こるのが、仕事への姿勢です。

先にも述べた通り、かつては定年後の幸せ生活のために今頑張ろうというものでしたが、年金もあてにできないので、今を楽しもう、年金に頼らずに生活できるように準備しようというものに変わってきています。

そうなると、今を楽しもうという人たちは収入よりも仕事内容、仕事よりも余暇が取れる仕事というものを選ぶ人が増えます。

こういう状況を考えると、いっそのことベーシックインカムとして、国民に一律で生活に必要なお金もしくはものが支給されるようにしてはどうでしょうか。

そうなるとより自分の好きなことができる仕事を選んだり、好きなことをする時間が増えるような気がします。

そうなれば、定年といった枠組みで年齢によって仕事をやめようという思いの人も少なくなると思います。

最後の障壁として、加齢による能力の衰えというのが立ちはだかるのですが、この点平均寿命や健康寿命が伸びている点から科学的に根拠が出てくると面白くなるなと思うところです。