地方公務員安全と健康フォーラム第109号(2019年4月)に寄稿しました。
いただいたのは、地方公務員のキャリア形成についてということで、「自治体職員のキャリアの描き方 自治体職員の専門性を自覚し、 スペシャリストを目指す」という題での掲載になりました。
私の考えとしては、プレイヤーとしては民間もある。
ただ、身分保障がある公務員を辞めてまで民間になる人は少ないと思うので、ある程度の安心を確保しておく必要があるという考えです。
一番大切なのは、やりたいことが明確になっていて、それをやり続けるということだと思います。
実は、私は公務員をやめた時点でこれをビジネスとしてやるというのが決まっていたわけではありません。
そのため、民間企業に就職しましたし、ビジネスコンテストにも出場しました。
そのようなことを経て、ようやくこれだというものが見つかり、今に至っています。
私は公務員を辞めることを前提に働いていたわけではなく、留学をしようと思って辞めたところがあるので、このような結果なのだと思います。
もし、公務員の仕事をしながらやりたいことが見つかったらそちらに進むというのもありだと思います。
民間と公務員と違って依怙贔屓が大切
なぜ、民間にいきたいと思うのでしょうか。
私は民間を経験したことがなかったですし、自治体職員としての仕事は楽しく、充実していたので、留学がなければ辞めることもなかったかなと思います。
ただ、いざ民間を経験してみると、民間は民間で悪くないかなと思ってもいます。
民間のどこが面白いのか。何が魅力なのか。
独立したり、民間にいくことの魅力について言うと、それは好きな人と好きなことができるということだと思います。
公務員の場合は公平性という観点から、どのような人も公平に接する必要があります。
ある取り組みをしたいと思っていて、サービスの受け手である市民の中に反対の人がいたら、その人の意見を聞きながら進める必要があります。
一方、民間は反対の人の意見を聞くというよりも、賛成をしてお金を払ってくれる人の意見だけを聞いていけば良いことになります。
どれだけ強く反対する人がいても、賛成の人が一定程度いれば、ビジネスとして成立するからですね。
公務員は反対意見の人を尊重して、反対ができるだけいないようにする。
民間は賛成の人の意見を聞いて、賛成の人ができるだけ多くなるようにする。
というのが違いだと思います。
民間は顧客に公平に接するよりも、依怙贔屓が大切ということですね。
こういう違いがあるため、民間の方が公務員よりも感謝される機会が多いのだと思います。
公務員が感謝されるとしたら、お金がもらえる事業者からぐらいではないでしょうか。
サービスの受け手である市民から感謝されるということは非常に少ないと思います。
これはサービスがプラスを増やすというよりも、マイナスを少なくするということで、万人に問題なく適用できるが、ファンは少ないという状態になるからですね。
これがあるので、公民連携ということが言われて、できるだけサービスは民間にという思いになるのだと思います。
ほとんどの行政、民間がこの違いを認識していないので、指定管理や業務委託でも評価の基準が行政基準になっていて、民間としてはその強みを活かしきれないというのがあるのだと思います。
熱狂的なファンを作るのか、それともなんとなく満足の人で良いのか、選挙という仕組みがそうさせているのかもしれませんが、投票率が低い昨今では、熱狂的なファンがいれば、なんとかなるのではないかと感じたりもするのですが、実際はどうなのでしょうか。
自治体職員の仕事を極めることで見えるキャリア
自治体職員は異動があるので専門性が身につかないと言います。
確かにそうですが、顧客は常に変わらないんですね。
顧客とは、つまり市民です。
いろいろな部署を経験することで、いろいろな立場の市民と接することになります。
そのため、市民の意見を幅広く理解している理解者としては最も強い人になるわけです。
これを極めていくとどうなるか。
おそらく、議員や首長になるということになっていくのではないかと思います。
顧客のニーズを最も把握していることが行政運営をしていく上で大切で、ニーズを把握できているということは、顧客との接点、つながりも一定程度持っているということだと思うからです。
実際、地域に出ていれば核となる市民の人たちと接することが多くなりますし、親しくもなっていきます。
信頼関係が築かれていくと、この人が私たちの代表にという思いにもなっていくのではないでしょうか。
職員が議員にとなると、あまり新鮮な気持ちがしないかもしれませんが、公務員は真面目なので、立場が変われば、しっかりとその立場の仕事をすると思います。
縦割り行政という批判がありますが、自身の所属している部署の立場の利益が最も大きくなるように主張をし合っているからそうなるわけで、こう考えると問題ないでしょう(笑
安定した身分を捨てて4年に1回の選挙に挑戦するかというと、若いうちはなかなか難しいかもしれませんが、最近は地域活動に熱心な職員も増えているので、今後は50代ぐらいで早期退職制度を利用して退職金も多めにもらいつつ、選挙に挑戦というような人も出てくるような気がします。
市民に推してもらえるというのは自治体職員にとって、自身の仕事への最高の評価ではないでしょうか。