生涯活躍のまち

移住者を呼んで何がしたいのか:地域課題とマッチングする仕組みづくり

これまで20年以上、自治体は移住の推進に取り組んできました。

このまちは良いところですというPRで、水、空気、食べ物、人は良いというのが日本のどこの地域でも同じことだと言われるようになりました。

そして、いくつかの地域では移住者が多く集まる地域というものが出てきています。

これには2種類あると考えてます。

1つは、地域の産業や活動に移住者が関わっているケース。

もう1つは、ベッドタウン的な住宅があるから移住者が暮らしているケースです。

1つめの方は、地方創生のモデルと言われるような地域で、移住者が地域の産業の担い手となったり、新たな事業を行ったりということが起きています。

おそらく、これが多くの自治体で目指しているところだと思うのですが、実現されているところは多くありません。

多くの場合は、住宅に移住者が来ているだけというパターンではないでしょうか。

これは、自治体が中心となって住宅開発をしたりというケースもあると思いますし、公共交通機関が充実して人が集まるといったケースもあると思います。

この場合は、移住者は来るだけで、地域での活動にはつながるケースはわずかです。

そもそも、自治体側が人が来ることを目的としているので、人が来た後どうするかを考えずにプロジェクトが行われているということも原因かと思います。

最も大きいのは、人が来た後の活用の仕方がわからないということではないかと思います。

実は移住者の多くは、地域で何かをしたいと考えている人々です。

ただ、移住した後に地域に入ろうとしても、相手にされなかったり、何か取り組んだら地域の意向と違っていて、はじき出されてしまうといったことが多々発生しています。

そのうちに熱が冷めてしまって、自分と家族中心の生活に戻っていくといったパターンが多いです。

この移住してからの数ヶ月が非常に大切で、その人の意欲と地域の課題を合致させて、具体的な取り組みにつなげるということが必要だと考えています。

ここができると、移住者が活躍の場をできるだけでなく、地域の課題を解決する取り組みが発生します。

では、これは誰が担うのか。

民間企業だとそれを担うメリットのある事業者でなくてはいけません。

空き家に困っている大家さんはあるかもしれません。

移住者が満足した生活を送ってくれれば退去を防げるというメリットがあります。

不動産会社の場合は賃貸管理だけのために取り組むにはちょっとメリットが少なすぎる気がします。

あとは、地域の金融機関でしょうか。

移住者がそのお金を地域の金融機関に預けたり、地域課題解決のために事業を行うのであれば借り入れもするかもしれません。

課題としては、大家さんも金融機関も地域の課題を必ずしも把握していないということですね。

地域の課題というのは身近なものでも良いのですが、やはり行政が認識しているような地域全体に関わってくるような課題でないと、すぐに解決してしまったり、特定の人のためのもので終わってしまって波及性がないからです。

ホシノマチ団地では、そのような取り組みをしているのですが、今の課題は団地の住民の範囲内でしか取り組みができていないというところです。

佐久市、臼田地区には多くの移住者の方が来ているのですが、その人たちがもっと地域に関わってもらえればもっと地域に動きが出てくると思います。

もちろん、すでに関わられている方は多いのですが、そういった方々がもっと地域の課題にフォーカスした活動になっていくと良いなと思っています。

では、事業としてそれに取り組むかというと、なかなか難しいと考えています。

というのも、それを行ったからといって、すでに満室の団地の部屋数は増えないからです。

もちろん、ホシノマチ団地への入居希望者はさらに増えるかと思いますが、待機待ちがいるような状態で、それがさらに増えても申し訳ないだけになってしまいます。

とは言っても、これはあるべき姿なので、取り組みをスタートします。

一方で、山梨県都留市の一般社団法人まちのtoolboxはその受け皿として機能しています。

地域に産業をつくる、仕事をつくるという取り組みを行っていて、移住者に限らず地域の人たちが働く場となっているところです。

加えて、プロボノメンバーが4年以上にわたって関わりを持ち続けてくれていて、外部の人材の力を活かせる場となっていると思います。

では、こちらの課題はなにかというと、拠点がないので移住者の把握が難しいということですね。

そもそも人口が少ないので、移住者数も佐久市に比べると格段に少ないという課題もありますが、その少数でも認識ができれば活躍の場を提供する、紹介するといった取り組みはできています。

ゆいま〜る都留という高齢者向け住宅は80室のうち3分の1程度は移住者で、そこが満室になったことから分かる通り、それだけの人が地域に人が来たのですが、今は人の入れ替わりは落ち着いています。

新築の住宅や中古でも不動産屋さん経由のものだと移住者との接点ができにくい状況です。

転勤などで短期でも来る人は一定数いることはわかっているのですが、そこへのリーチがまだ難しいというところではあります。

そのための拠点として「ここから」のコワーキングスペースや中庭があり、これらは市民が中心となって担っていく場として提供しています。

ホシノマチ団地もそうですが、基本的に主役は市民です。

自分たちが取り組めばスピーディーに思い通りに進めることはできますが、市民が主体的に自分たちの実現したいことをサポートしていくそういった役割が大切だと考えているところです。

そうすることで、時間はかかりますが、プレイヤーが増えて、より大きな地域の動きにつながっていくと考えています。

ホシノマチ団地は、人を呼ぶ、その人に地域の課題を解決する場を提供する、地域の課題が解決されてさらに人が来るという流れ。

まちのtoolboxの方は、地域の課題を解決する、そして人が来る、その人たちが地域の課題を更に解決するという流れ。

始まり方が違うだけで、進む方向性は同じです。

こう考えてみると、何もないところで、ホシノマチ団地はなぜ人が呼べたのかというのは、また別の話になりますが、それができたというのは意外とすごいことなのかもしれません(笑

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