公務員をしていると、数年で異動があるので、ずっと同じ業務に携わることはできません。
そのため、専門性が身につかないとか、部署を変わったときの喪失感とか、デメリットばかりが言われていました。
もともと私は異動をする理由は、公平性の担保や癒着の予防といった部分で行われているものばかりだと思っていたのですが、そうではなかったようです。
バブル前の日本企業はなぜイノベーションが起こり続けていたのかということを分析した本が、この 知識創造企業という本なのですが、そこにこう書かれていました。
日本企業は人事異動によって、他の部署と自分の部署の暗黙知を共有し、それをもとにイノベーションを起こしていると。
部署が違うと全く扱う業務は違うかもしれませんが、会社として向いている方向は同じです。
そのため、前の部署の内容が異動後の部署で役に立つこともありますし、異動後の部署のことが前の部署で役に立つことも出てきます。
さらに、その前後の部署が連携をすることで、新たなイノベーションが起きる可能性があるということなのだと思います。
そういった強制的な交流の場を作ることが、イノベーションを生む秘訣だということだったんですね。
行政ではよく縦割りということが言われますが、その縦割りをなくすという点でも異動は一定の効果を果たしているのかもしれません。
また、これからの時代は特定の分野の業務ばかりをしている人よりも、いろいろな業務を経験している人材のほうが求められるようになってきているのではないかとも思いました。
これから何が起きるかわからない時代で、突然全く違う分野の業務へ異動しても、すぐに新たな業務をこなすことができるというのは、一つのスキルといえるのではないでしょうか。
私も公務員だった頃は2週間ぐらいすると、その分野では自分が一番詳しくなったかなと感じられるような状態にはなっていて、そういった新しい環境に適応する力というのも見る人が見ると必要な人材になるのではないかと思います。
このスキルはどちらかというとイレギュラーがあったときしか役に立たないかもしれませんが、新たなことをやってみようといったときにも応用ができるような気もします。
普通は1つの業務で何年も担当するところ、自分の意思とは関係なく異動が起こり、それに慣れる必要があるだけでなく、その業務について組織内で一番理解している人材になるわけで、それができますということは、魅力に映るのではないかと思いました。
専門のスキルが大切だと思うか、新たなスキルを身につける力が大切だと思うか。
こういう味方をすると、異動慣れした人は強そうですね。