生涯活躍のまちは、いろいろな業種の企業が取り組み意欲を持っています。
ただ、業種ごとに得意分野があり、また狙いも異なるため、そのあたりを自治体としてはあらかじめ想定しておく必要があります。
そもそもの話ですが、事業者を探す際には、地元の事業者が優先という考え方があると思います。
それは、本社が東京にある会社だとその会社の法人税は東京に入りますが、本社が地元であれば地元に法人税が落ちるからです。
確かに大手企業を誘致することでその後の波及効果も見込める可能性はありますが、運営として継続して関わるならそれは見込めるものの、企画のみ、建設のみとなると利益だけ取られて終わってしまうことも多いと思います。
大手にやってもらった方が安心というところはあるかもしれませんが、私は地域を担うのは地元の人たちという考え方なので、できる限り地元の事業者が担う形に持っていくべきだと思っています。
さて、それで本題の業種別の各企業の考え方についてですが、以下のように整理したいと思います。
1.建設業
公共施設の建設に関わってきており、行政とのつながりも強いです。
最近では事業の拡大をして、老人ホームなどの運営までやっている会社もあります。
ただ、基本的には建物を建てることで収益をあげようと考えており、そこが一番の強みです。
また、会社規模も大きいところがあるため、体力的な安心感があります。
建物を建てるために、運営事業者と一緒に提案をしてもらうというのが良い形になると思います。
2.金融機関
マイナス金利政策でお金を持っていても損をする状態になっています。
金融庁からは新事業への投資をするように促されており、投資先は求めています。
しかし、数字で物事を判断するため、その部分が甘いと動かすのが難しくなります。
また、自ら建物を建てる、運営するということも行うことはありません。
協力できるのは、お金の貸し付け、または建物のホルダーとなって貸し出すという形だと思います。
金融機関自体が建設会社や運営会社を連れてくるように促すことが良いと思います。
3.医療・介護事業者
高齢が進むにつれて、医療保険、介護保険制度が事業者にとって厳しく改定されてきています。
そのため、保険に頼らない予防や健康づくりの部分への進出し、将来医療、介護が必要になった顧客を囲い込もうとする事業者も出てきています。
また、有料老人ホームの運営をするなど、高齢者向けのサービスを実施していることから、生涯活躍のまち事業においても前向きな事業者が多いです。
ただ、注意する必要があるのは、アクティブシニアが対象で、開始直後は本業である医療、介護の利用は少なく、収益としては見込めないため、生涯活躍のまち事業単体での採算をとれるようにする必要があること。
また、アクティブシニアを対象としたサービス提供という新たな分野に取り組む必要があるということを意識する必要があります。
アクティブシニアが対象だと居室の大きさといったハード面もニーズが違いますし、営業先も家族よりも本人になってくるので、未経験分野が数多くあるという点を認識してもらう必要があります。
公募要項の中にサービス付き高齢者向け住宅の運営経験というものを含める自治体がありますが、私はそれよりもコミュニティづくりや移住に関する取り組みの経験があることの方が重要だと考えています。
というのも、制度上はサービス付き高齢者向け住宅の運営になりますが、実質的に既存のサービス付き高齢者向け住宅のサービスを提供することはほとんどなく、むしろ新たなサービス内容の考案と提供が必要になってくるわけで、介護の資格などよりも必要になってくるのは職業紹介、人材派遣、創業支援といった仕事関係の資格や経験が重要かと思います。
4.その他
健康関連、地方創生関連ビジネスをしている事業者は関心を持つ企業は多いです。
ポイントは生涯活躍のまち分野への理解と体力ですね。
正直なところ、生涯活躍のまち事業の収益性は低いです。
地方創生分野でいうと、インバウンドや地域のPR等の情報発信関係が収益率としては高いので、そちらの方が人気としては高いと思います。
魅力としては高齢社会という社会課題を解決できるという部分で、この分野に取り組むことで課題先進国としての世界でのポジションがキープできるのではないかと考えられる企業が手を挙げるのではないかと思います。
ちなみに、中国も近い将来高齢社会に突入するので、中国企業はこの分野への関心は非常に高いので、中国企業との連携の可能性があるのであれば、前に進みやすくなると思います。