前回、生涯活躍のまちに取り組むには、①移住者募集、②地域の受け入れ体制づくり、③担い手探しが必要だと述べました。
今、多くの自治体ができずにいるのが、③の担い手探しです。
自治体が直営で行えばそのハードルは極めて低いのですが、財政状況が芳しくない自治体がほとんどの中で、直営で行おうというところは首長の決断と強いリーダーシップが必要になります。
ほぼすべての自治体が民間事業者との連携を考えることになると思いますが、民間企業は営利企業です。
そのため、将来の収益が見込まれないと事業に手を挙げません。
さらにいうと、収益が見込まれる可能性はあっても、リスクが大きい場合はやりません。
これらを行政側が担保する必要が出てきます。
そうです。まず事業者を探す前に行うことは、行政側でどこまでこの担保ができるかを考えることです。
その時に考えられる担保について、論点を挙げておきたいと思います。
わかりやすい話にするために、移住者向けのサービス付き高齢者向け住宅の整備について考えてみましょう。
1.建設費
最初に上がってくるのがこの問題だと思います。サービス付き高齢者向け住宅の場合は国交省の補助金制度がありますが、これだけではリスクが高いと判断する事業者がほとんどです。
自治体としても国交省の補助金と同額程度は支援する想定を行う必要があると思います。
2.土地・建物使用料
自治体が土地や建物を提供する場合は多く見られますが、各自治体が条例で定めている使用料の基準は固定資産税算定額の6%程度で横並びに整備されており、これだと20年間運営するとその土地が変える程度になっています。
そこまでの経費を払うのであれば、自らで土地を購入して実施する方が良いというのが事業者側の立場です。
使用料は限りなくゼロに近づけることになると思います。
3.運営費補助
これは後ろ向きの自治体が多いのではないでしょうか。
ただ、事業者としては、地域との交流拠点といった収益を生まない施設については、なかなか前向きに考えられないところです。
そのため、交流拠点は指定管理に入れるなどの官民連携の可能性を検討しておくのが良いと思います。
4.入居者募集支援
生涯活躍のまちは移住者を募集することが前提になっていますが、それは行政側の都合であって、近隣で入居希望者がいればそれで良いというのが運営者側の考えです。
そのため、移住者の募集については行政側のてこ入れがかなり必要になり、首都圏での情報発信や地域の体験ツアーなど継続した支援がなければ将来的に移住者の割合が少なくなっていくと思います。
5.その他
細かい部分でいうと、建物建設のために借り入れをする場合に金利を保証する制度があったり、立地の良い場所を選定する、公共交通を充実させて交通アクセスを良くする、公共施設を併設させて利便性を高めるとともに賃料収入が入るようにするなども検討しておくと良いと思います。
これらを考える上では、行政の支援に対して、どの程度の将来的なリターンがあるかが一つの説得材料になります。
内閣府ではアクティブシニア1人当たりの経済効果は180万円/年と出ているので、これが一つの目安にできると思います。
10人移住して、20年間だと180万円×10人×20年=3.6億円の経済効果です。
庁内調整が最初のハードルになってくると思いますが、事業者募集を円滑に進めるには、ここがとても重要です。
具体的な事業者の探し方についてですが、いろいろな業種の企業が生涯活躍のまちに関心を持ってはいるものの、それぞれが得意なことは異なっていますし、また思惑というものも異なります。
次回は事業者に声をかけるにあたり、前提として持っておくべき各業種の強み、弱みについて述べたいと思います。