生涯活躍のまち事業は、複数の自治体ですでに事業者が決まっています。
大手のハウスメーカーなども参入していて、かなり早い時期に決まっていたところもあるのですが、進んでいないところが多いです。
その理由は、行政側の補助金が足りないからです。
生涯活躍のまち事業は、大手企業にとっては新規事業への参入です。
この業界に関する実績がないにもかかわらず、その状況でなぜ受託できたかというと、行政側が類似事業として建物の建設や介護型高齢者向け住宅の運営実績、企業規模で判断したからだと思います。
さらに言うと、そのような企業は従来から自治体から補助金を受けて事業を実施するというスキームに慣れているので、リスクを取らずに補助金で収益を上げるということを考えたビジネスモデルになっています。
しかし、自治体の財政状況が悪化し補助金が出しにくい状態であることに加えて、自治体側にとっても新規事業のため、どの程度補助金を出したら良いのかがわかりません。
そして、判断根拠もないため、所管部署の押しが弱かったり、財政部門が強い自治体は補助金がほとんど出ないという状況になります。
また、生涯活躍のまち事業は、直接的な収益を生まない交流拠点の整備を含めています。
このコミュニティづくりだとか、多世代交流というのは営利企業がこれまで行ってこなかった、不得意な部分でここを担える企業は皆無です。
もう1点、近隣から人を呼べば済むにもかかわらず、移住者というコストのかかる集客を行うことが求められます。
民間としてはその部分で行政側に負担を求めたいという気持ちがあり、事業者募集の時にはそのあたりがしっかりと決まっておらず、そのあたりを確定できずに進まないという状況だと思います。
①補助金、②コミュニティづくり、③移住者募集という3つのミスマッチは解消すべき課題です。
民間も従来の方法から脱却する必要がありますし、行政も想定できる部分をしっかりと考えた上で公募を行う必要があったわけで、公募要項を作る際には、これまで実施された自治体のものをまねるだけでなく、うまくいっていない原因を取り除く工夫を加えるという作業を行う必要があります。