以前自治体職員のキャリアデザインについて書いたところ、少なからず反響をいただきました。(役所は本当にキャリアデザインがしにくいのか)
自治体としては、優秀な人材を確保するという点から、職員満足を高める必要があり、この点、人事課はどうすれば良いか頭を悩ませているところもあるかもしれません。
東京の市町村で言うと、入庁1~2年で東京都や23区に移るというのはよくある話です。
公務員という職種間での人材の奪い合い、また民間との人材の奪い合いという2つの側面があると思います。
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なぜ、その自治体を選んだのか
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おそらく多くの人にとって、なりたいのは公務員であって、その自治体の職員ではないのだと思います。
そのため、自治体のイメージで選んだり、試験内容で選んだりということが往々にしてあるのだと思います。
複数の自治体を見た上で第一志望の自治体に入ってきた人であれば、選んだ理由も明確だと思いますが、第二志望だった場合は入庁した後に第一志望を受けなおしてそちらに移るということを考える人もいると思います。
実際、私も入庁1年目に都庁の試験を受けて一次試験委合格しましたが、二次試験の面接が仕事と重なったため辞退したという経験があります。
この時に受験した理由は覚えていませんが、学童クラブという望まない部署だったこと、広域自治体の方がなんとなく大きく見えたからだと思います。
第一志望で入った私でさえもそんな感じでした。
入庁してすぐの頃は自身の自治体の良さも見えにくく、むしろ入ってから理想と現実が異なったりして、外に求めたくなるものなのかもしれません。
入庁してすぐの頃は、自己肯定感を高めることを重視した研修や仕事の機会を設けるのが良いと思います。
5年程度経つとある程度その自治体内でのポジションが見えますし、年齢制限があるところも多いので、その頃には他の公務員の道というのはあまり考えなくなるのではないでしょうか。
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中堅職員のキャリアデザイン
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5年以上が経つと、異動も数回経験しています。
数年で異動しているので、ずっと民間で同じ担当でやっている周りの友人等と比べて、専門性がついていないと悩む人も出てくると思います。
しかし、この専門性がないという認識があることで、民間には転職ができないと考える人がほとんど出てこないという役所側としてはメリットにあたることが出てきます。
民間企業でもそうですが、全く畑違いの部署に配属することは、その人の視野を広げることになる一方で、専門性は身に付きにくいという相反する作用が出てきます。
会社は特定の業界に関わっているところが多いので、複数の業界を異動によって渡り歩いている人は採用しにくいといえるかもしれません。
ただ、ここで視点を変えてみると、事務職という仕事内容に変わりはないんですね。
民間企業では企画、、総務、営業などと担当が分かれていますが、役所でも企画、総務はありますし、営業は市民や団体対応と言い換えることができると思います。
窓口は接客ですし、徴税も債権回収という分野の専門家です。
官民連携が言われていることからもわかるように、行政が行っている仕事のほとんどは民間で行っているので、民間でも通用する仕事をしていると言っても良いと思います。
そういった点では、自身を持っても良いのではないでしょうか。
このような考えをしてしまうと、民間でもやっていけるのかという思いを持つ人もいると思いますが、私は民間での業務経験というのは非常に貴重なものになると思うので、キャリアパスの一つとして良いのではないかと思います。
というのも、自治体も新卒で40年間ずっと務めるというのではなく、人の入れ替えがあっても良いのではないかと思うからです。
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民間転職者の受け入れ体制を考える
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自身の経験からいうと、民間へ転向したことによって、学べたことは非常に多いです。
これからは公務員もビジネスがどうすれば成り立つかというのを認識しておく必要があり、その部分を学ぶことができたのはとても大きかったと思います。
かつて、民間に学ぶというのは、おもてなしやスピードなど業務の質的な部分が多かったと思います。
しかし、今後は民間のビジネスの仕組みそのものを学び、理解できるようにならないと官民連携はできません。
もちろん、ビジネスを知らなくても民間が民間の部分を担えば良いので可能ではあるのですが、それだと対等な話し合いができない恐れがあり、行政側のレベルアップというのは必須ではないかと思います。
主にお金の部分ですね。
私も含め行政関係者はお金に触れたがらないというか、触れるのが良くないと思っているところがあり、そこのハードルは高いのではないでしょうか。
そうなると、民間経験がある人を採用することになるわけですが、一度自治体職員になって、民間に転職して、また戻ってくるというのはどうなのでしょうか。
民間企業だと意外とあるので、あまり抵抗感はないような気がします。
もともとの組織内での人間関係も活かせますし、研修の手間も省けます。
ただ、問題は待遇です。
民間に行っていた期間の給料は普通だと公務員で在職していた時の8割ぐらいで算出されると思います。
中途採用扱いでも結局当時の同期よりは在職年数が少なくなるので、劣る条件になるのではないでしょうか。
自ら望んで行ったことですし、組織の意向でもない転職になるので、当然といえば当然ですが、この部分は今後検討していく余地があると思います。
給料の面もそうですが、役職についても同様です。
現状だと係長で退職した人が戻ってきても主事でスタートだと思います。
それが新卒採用と同じスキームでの採用だからということもあるかもしれませんが、経験に応じた役職というのも検討事項だと思います。
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戻ってくることは悪か
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役所に再び戻ってきた人がいた際に、大切なのは受け入れる側の意識だと思います。
そのような人は確実に珍しい人で、少し変わった人という認識を持たれるかもしれません。
また、もしかしたら民間で通用しなくて戻ってきたという側面もあるかもしれません。
民間での取り組みについては採用時に把握するとして、そのような状況を乗り越えて採用に至ったのであれば、職場としては歓迎して受け入れる雰囲気づくりができると良いと思います。
役所を辞めた人が戻ってくるというのは、従来では考えられないことですが、採用年齢が柔軟になっていたり、民間でも転職が当たり前になっている昨今の状況を考えると、役所もその流れに入ってくるのは当然だと思います。
人口が減少し、優秀な人材が取り合いになっている状況では、そのような社会の流れに合わせた体制づくりというのが重要です。
ある自治体を退職して、民間を経験してから、ほかの自治体に入るという人も出てくるかもしれません。
今はまだ特殊ですが、そのような人たちは今後も増えてくると考えられ、それに合わせた対応というものも考えてみてはいかがでしょうか。