行政評価がはじまった時期はいつなのでしょうか。
国では2001年の中央省庁等の改革に伴って政策評価制度が導入されました。
その前に三重県など地方自治体レベルで導入されはじめていました。
評価指標設定の難しさ
実際に行政評価を担当する側になってみて、答えが出なかったのが、行政の取り組みはお金で換算できない価値になるので、評価指標が設定しにくいという問題でした。
たとえば、公共施設を作ったとします。
民間の場合は、入場料や販売物の売り上げで投資額が上回れば成功とみなされます。
しかし、行政の場合は目的が売り上げの最大化ではなく、その施設が利用されることでの住民の生活の向上になります。
さらには、入場料を無料にしたり、利用料を低価格にしていたりもします。
そのため、これをどう測れば良いのかというのが課題になります。
将来必要なくなることという評価基準
以前公務員の先輩からいただいたドラッカーのマネジメントを読み直しました。
正直、当時もよくわからなかったのですが、今でも十分に理解できていない自信があります。
ただ、今回読んでいて、一つの言葉に惹かれました。
それは、「あらゆるサービス機関が守るべき原則は、現在行っていることは、かなり近いうちに廃棄すべきものである。」
というものです。
これは民間だけを対象にしているのではなく、行政も含めてのサービスだと理解しました。
こう考えると、行政のサービスについても、近いうちに廃棄すべきものなのだという認識を持つ必要があります。
これは行政内部でより良いサービスができるようになったという場合もあれば、行政以外により良いサービスができたということもあると思います。
また、サービスの受け手である住民側から必要とされなくなったということもあると思います。
少し考えただけで3通りの廃棄する理由が見つかりました。
これらは、いずれもポジティブな理由だと考えられるのではないでしょうか。
行政サービスとは、将来不要になるための環境づくりのものだという認識で評価指標を作ってみるのはどうかと思いました。
サービスをやめるための成果指標とはどういうものか
行政がサービスをやめるためには、住民から必要とされなくなる必要があります。
必要とされないというのは、
- 行政が実施する必要がないという場合(民間が実施する)
- 誰も実施する必要がないという場合(根源的な課題がなくなった)
という二つのパターンがありそうです。
1を目指していくためには、指定管理者制度のような民間に運営をゆだねるというのはその第一歩だと思います。
今、指定管理者制度の行政の成果指標はその施設の利用率や満足度などが定められていることが多いのではないでしょうか。
これは、指定管理者制度を継続することを前提とした成果指標の設定になります。
そこで、将来的に指定管理者制度が必要なくなり、民間単独で運営できるようになるとしたらどういった成果指標になるでしょうか。
将来的に民間が自立して運営をしていくことを最終目的とするのであれば、その時の成果指標というのは、確実にお金の部分になってくるはずです。
行政からの補助金なしで運営していくことになるので。
しかも大変なのは、指定管理者として、行政が想定したターゲッティングと目的に沿いながら収益を上げるということが求められます。
市営住宅の指定管理における目指すべきところは?
たとえば、市営住宅の指定管理について考えてみましょう。
市営住宅は低所得者向けの住宅なので、家賃だけではビジネスとして成立しません。
だから行政がやっているのだというのがこれまでの流れでした。
しかし、民間が運営すれば、行政よりも質の良いサービスが提供され、家賃の滞納も少なくなるだろうといったものが従来の指定管理者制度の考え方です。
しかし、そこをもう1歩進めて、民間が自立して運営できるようにすることを目標として定めてみましょう。
そうすると、見えるものが変わってくるのではないでしょうか。
指定管理者制度では、多くの場合民間は補助金を行政からもらって運営します。
そして、その補助金は多くの場合収益が不足する分の補填として利用されてきました。
しかし、将来的に指定管理者制度を廃止し、民間企業が独立して運営できるようにするといった観点からだと、それでは不十分です。
というのも、より多くの収益を生むために投資をしないといけないからです。
その投資をするためのお金が指定管理者の補助金だという認識に立ってみてはどうでしょうか。
そうすると、通常通りに入居者募集と建物管理だけをするのではなく、近隣地域も含めた生活必需品の提供をして収益を上げる。
高齢者や子どもの安否確認サービスを導入して収益の柱をつくるといったことを指定管理者制度の運営費から取り組んでみるといったことが出てくるかもしれません。
行政が管理していたものを民間に委託することでコストを削減するというのがこれまでの行政改革でした。
将来的にそのサービスを行政が行わずに民間にゆだねることを目標とすれば、指定管理者の選定についての意識も少し変わるような気がします。
そして、選定側が変われば、応募側の民間を意識が変わってくると思います。
新たなことに取り組むのはリスクですし、大変ですが、そういった意識の企業が今後は求められていくのではないかと考えています。
政策レベルでの成果指標設定
さて、もう1つの根源的な問題の解決ができた場合を目指すという点についてですが、こちらは成果指標を定める1部署だけではなかなか定めにくい部分だと思います。
これまでは事務事業評価レベルのものを考えていましたが、政策レベルでの評価で実現されるものだと思います。
というのも課題が多岐にわたる内容になってくるからです。
市営住宅が必要なくなるという状態はどのようなものかを考えてみましょう。
住宅困窮者がいなくなったというのがその状況だと思います。
では、今はどういった理由で住宅に困窮しているかというと、障害を持っている、高齢で働くことができない、子育てで働くことができないといった複数の理由が考えられます。
そのため、複数の理由をそれぞれ解決してようやく実現できる内容です。
となると、市営住宅を管理している部署では対処しきれない問題ということで、より上位の政策レベルでの評価が適しているといったことになると思います。
政策レベルでは、実現すべき社会のあり方が目標と設定されています。
たとえば、誰もがいきいきと暮らせるまちといった感じです。
本来であれば誰もがいきいきと暮らせていないのはなぜだろうと考えて、課題を抽出して、成果指標も設定していくという形が理想だと思います。
しかし、実際は首長のトップダウンだったり、国の政策だったりがはめ込まれてくるので、そこの論理を整理するのが大変で、うまくできてなかったりもするんですよね。
今行われている行政評価は施策、事務事業レベルのものがほとんどだと思うので、まずはそこから、将来やらなくても済むようにするにはどうしたら良いかを考えた成果指標設定をしてみるというのも面白いのではないでしょうか。