これまでの移住施策の流れについて振り返ってみると、地方の人口が減っている。どうにかしたいからスタートしました。
人を呼ぶなら若い人が良い。
若い人来てくださいという移住の取り組みが始まります。
そういったPRに加えて、住まいも必要だということで、空き家バンクの取り組みも始まります。
しかし、住まいはある程度準備できたものの、若い人には仕事が必要で、地方には仕事がないから移住できない。どうしようとなります。
ここで、仕事をつくるという方向と、仕事が必要のない高齢者の移住だということで、生涯活躍のまち事業が生まれます。
高齢者には医療や介護の環境が必要だろうということで、サービス付き高齢者向け住宅を作る流れができたり、地域包括ケアを推進しようという流れが重なってきます。
老人ホーム認定のあるサービス付き高齢者向け住宅であれば住所地特例が適用になるといった制度改正もこの時期に行われました。
しかし、実際に高齢者の移住に取り組むと、元気なうちに移住するということで、安否確認や生活相談といったサービスは不要という声が出てきて、対象はそういったサービスがするに必要となる70代、もしくは安否確認や生活相談が必要だという不安を抱える層がターゲットになってきます。
全国的に展開できるかと思いきや、意外とターゲットとなる対象のパイが狭かったというのが見えてきたことではないかと思います。
生涯活躍のまちについては、ここで大きな転換点を見せまして、高齢者にとらわれない全世代型にしましょうというなんでもあり状態に突入します。
そして、移住は見ず知らずの部分に行くよりも何かしら関係がある地域に行きやすいということで、関係人口という言葉が使われるようになります。
ここまで来るとターゲットが広くなりすぎて、取り組める内容も広くなりすぎるため、なんでもありです。
では、このなんでもあり状態の関係人口の取り組みの先に見えてくるものは何なのか。
関係人口づくりに取り組んでいると、それぞれがそれぞれの想いを持って関係を持っていることに気づきます。
1人1人個別の印象、事情を持っているということです。
民間であれば、この1つの事例をもとにニーズがあると判断して、同様のタイプの人たちを呼ぶような取り組みを行っていくことになると思います。
ある特定のターゲットを想定して取り組んできた自治体であれば、そのターゲットを特に重視した取り組みをしていくことになると思います。
このターゲットの決め方というのは、なかなか行政には公にしにくいところで、ここをどうぼかしながらターゲッティングしていくかというのが大切になりそうです。
細かくターゲッティングすればするほど批判の対象になりやすく、若者の移住、ファミリー世帯の移住を推進します程度であれば問題ないと思うのですが、シングルマザーの移住を推進しますとか、フリーランスの移住を推進しますと対象を絞っていくとすんなりとはいきません。
また、地域は特定の世代だけでは成り立たないものでもあります。
たとえば、地方創生第1期の時の生涯活躍のまち事業はアクティブシニアの移住の政策でしたが、シニアだけのまちでは成り立ちません。
もちろん、そのあたりは考えられていて、シニアが移住すれば消費が増え、それだけ働く場が生まれるだろうという想定の下で進めています。
つまり、ある特定の世代だけを誘致しても結局は消費や仕事が増えるので、他の世代も集まるのではという考え方です。
こういった考え方ができれば、まずは特定のターゲットを誘致して、そこからの広がりを期待するといった考え方もできるのではないでしょうか。
確実に言えるのは、テーマなく、なんでも良いから関係人口だと処理をしていると、結局何も残らないということです。
しっかりと軸をもった関係人口づくりと優先順位をもった取り組みというのがこれからは求められてくると思います。