行政の人たちが一番難しいのが、リスクを冒すことです。
そのため、新しいことに挑戦する際には、それなりのハードルがあります。
これは民間企業でもそうだとは思いますが、民間企業と行政では組織、上司の説得の仕方が違うんですね。
民間企業の場合は、市場調査をして、ニーズがあり、収益事業として成り立つというのがわかれば了承されます。
行政の場合は、収益というのは気にしません。
もちろん、税金を使うことなので、ずっと支出が続くということに対しては敏感ですが、その支出が将来的になくなるのであれば、儲かっていなくても良しとするのが行政です。
では、何を気にするのか。
1つは市民の意見です。
少数でも反対する人がいて、その人の声が大きいとなかなか動けません。
もう1つは、成果が上がるのかということです。
成果というのは、もちろん収益ではありません。
ここで言う成果とは、住民の満足度向上に寄与するかということです。
この満足度向上というのは非常に判断が難しいんですね。
利用者数で判断できるという言い方もあるかもしれませんが、行政だと利用料無料にできますし、ビジネスとは関係ない世界での評価になってくるので、基準がつくりにくいという問題があります。
そこで重視されるのが、よく批判される前例主義です。
前例があれば、どのような効果があるのかわかります。
また、実際に行っている状況を見れば自分の地域でも実現可能そうだというイメージもわくと思います。
最近では民間との協働でやっていくというのがトレンドになっていますので、民間からの提案を行う機会も多いと思います。
その際に念頭に置いておいていただきたいのが、自分で実践していない話を言うだけでは行政は動かないということです。
これは、企業よりも市民の人に多いかもしれません。
どれだけ不便を感じていても、その不満だけでは行政はほとんど動きません。
理由としては、行政はその解決方法がわからないからです。
厳密にいうと、解決方法というのは複数あり、行政が実行に移すには、公平性の観点からそれらをすべて検証して、合理的な理由を基に判断しなくてはいけないので、時間がかかります。
その点、すでに何らかの活動を実際にしていて、実績があると動きやすいんですね。
というのも、その行動は市民にすでに何らかの効果をもたらしているはずで、すでに地域で発生している活動を広げる、支援するというのは複数から選ぶ必要がないので、判断が少なくなるからです。
行政はリスクを冒すことを嫌うということを冒頭に述べましたが、それは自ら判断をする、自ら責任をとる状況になるということを嫌うという意味です。
行政にはできるだけ承認だけしてもらう、という環境づくりをするのが行政との物事を進めるコツになると思います。
行政職員の方々の中には、良いアイデアがあるから実行したいと思う人も多いと思います。
しかし、上司の合意が得られない、庁内の合意形成が難しい、と嘆いている人も少なくありません。
自分が市民の話を聞くときに市民に対してしていることが、自分が上司を相手にすると上司が同じことをやっている、同じ気持ちでいるということを忘れてはいないでしょうか。
職員が提案したとしても、新しいことをやることは上司にとってリスクです。
つまり、上司が実施を判断しなくてはいけません。
その判断を楽にするには、まずはそのアイデアを小さくても実施してみてはどうでしょうか。
そうすると、周りからの見え方も変わってくると思います。
これはどのような組織も同じだとは思いますが、勤続年数が長くなるほど仕事上で接する人も増えて、職員間での信頼関係も深まってきます。
役職があがるというのもあるかもしれませんが、在職期間が長くなればなるほど、新しいことを実施する上でもスムーズにいくことも多く、自分の好きなことができる状況が増えてくるのではないでしょうか。