行政は、所得の再分配など、あるべき姿を実現するために税金を使うところだと思ってきました。
しかし、最近は、税金という収入を増やすことが主な目的になってきているのではないかとも感じるようになってきました。
その原因は、人口減少、少子高齢化で税収が減ってきて、行政がやるべきだと思っていることができなくなっているからだと思います。
収入を増やすためには、投資を回収するといった考えが必要で、民間と考え方が似てきているとも言えます。
ただ、ここの意識の変化がまだまだ過渡期なので、そもそも投資という言葉でとらえることも抵抗がある人もいますし、行政がお金を回収するということに違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。
そうは言っても、事実上、ふるさと納税など、税収を増やすことが主目的となっている業務もあります。
でも、それが結局は行政同士のパイの奪い合いだと感じている人も多いのではないでしょうか。
地方創生ではその答えが示されています。
今回はそちらについて紹介したいと思いますが、ご覧いただくことで、今後取り組むべき方向性が見えかもしれませんし、不足している点に気付くこともあるのではないかと思います。
税金を支払う主体を増やす:人や企業を連れてくる
移住や企業誘致といった従来からある取り組みですね。
人が増えれば所得税や住民税が、企業が増えれば事業税が増えるといった形になります。
企業の場合は撤退したときのリスクについても知られていますが、来ないままよりは来てもらった方が税収面では増えることは確実です。
人口減少が確定している中で、地域ごとのパイの奪い合いとなっているのが現状かと思います。
移民の受け入れといったものもこの部分になります。
税収のもととなる売上を増やす:ものやサービスを売る
その地域の特産品などを販売するといった事業を盛り上げる取り組みです。
いわゆる産業振興でしょうか。
主に事業税が増える税収になるかと思います。
ふるさと納税も制度としてここに入ってくるかと思います。
ふるさと納税の場合は、直接税収が増えるだけでなく、返礼品が地域事業者のものなので、事業税も増えることになると思います。
ふるさと納税についても、もともと支払われる税金の行き先が変わっただけといったパイの奪い合いの要素もあります。
パイの奪い合いをしているだけというのは、ずっと言われてきていて、裏を返すと自分の地域だけが良ければ良いみたいな考えとも思われがちですが、国全体で見ると残る地域を決めるための競争を促しているとも言えると思います。
パイの奪い合いのない税収の増やし方
ただ、パイの奪い合いではないところで戦いたいというのもみなさん考えていることかと思います。
これまで述べたところでいうと、産業振興の部分ですね。
地方創生2.0では、その道としては輸出かインバウンドの海外需要の一択だとしています。
国全体で考えると、それぞれの地方で競争をして、選択と集中をしていっても税収は増えないので、外から持って来るのが早いということですね。
もちろん、国内でも増やすことは可能です。
お金が動く量を増やせば良いということですね。
これまでは1人が100円使っていたものを120円使うようにするといった形です。
人口が増えていると、1人が100円でも翌年には人が増えただけ、消費が増えます。
そうすると、需要が増えたように見えるので生産を増やそうという気持ちになります。
一方で、人口が減っていると、需要が減ったように感じるので、生産が減るという流れになっているのが今です。
ここで1人あたりの消費が増えたとすると、人口が減っても需要が増えたように見えるため、生産を増やす気になって、新たな投資が生まれ、それを見えさらなる投資が増えるといった循環になっていくというのが理論的な経済発展の流れかと思います。
実は、行政の場合は、この最初の投資しか行わないというのがこれまででした。
国はお金を出しただけで、その投資からのリターンは得ないということですね。
というのも、投資から直接のリターンはなくても、投資がうまくいけば間接的に税収が増えるので、気にならないものだったのだと思います。
しかし、税収を増やすといった点では投資からのリターンを考えていくことになるのがこれからではないかと思います。
もちろん、民業圧迫だという意見も出てくると思いますが、何に活用するかといった工夫で解消できる部分もあると思います。
手前味噌ですが、ホシノマチ団地について言うと、土地、建物を私たちが借りて移住者専用住宅として活用しています。
単なる住宅として貸し出すのであれば、民業圧迫という意見が出ると思いますが、移住者に限定したことで、地域の理解を得られたところもあると思います。
結果、これまでお金が出ていくだけだった不動産から、行政としては土地、建物の賃料収入が入ってくる形になりました。
なぜ税収を増やそうとしているのか
これまで税収を増やすという観点から述べてきましたが、私は税収さえ増えればすべてが解決できるという考えは好きではありません。
それはお金ですべてを解決しようという思いが根底にあると考えるからです。
民間で活動していて思うのが、お金でない活動をすることで、お金が生まれるということがほとんどだということです。
株や不動産といった投資であれば、お金がお金を生むといったものかもしれませんが、根本的には人の労働が富を生み出しています。
つまり、お金は労働が生み出すものなので、お金はなくても生み出すことができるものはある、そんな考え方で取り組んでいる地域は強いと思います。
お金は解決手段の一つに過ぎず、公共の福祉も所得の再分配も労働によって行うことができるというのを考えてみるのも面白いかもしれません。