私はもともと市民主体のまちづくりができればと思って公務員になりました。
自分たちのまちは自分たちで作っていくべきだという思いからです。
そのためには、行政がそういった環境を整えなくてはいけないということで、整える側になろうと思ったのですが、いざ入ってみると民間側の担い手不足を感じたところです。
そして、民間側になって、自由にまちづくりの活動ができるようになったわけですが、行政と連携して行う事業にこだわって取り組んでいる気がします。
税金に頼らないという割には、行政との関わりを大切にしている。
それはなぜなのだろうと思ったところ、根本は行政の信頼回復に貢献したいという想いがあるのだと思いました。
私が学生の頃は官僚の汚職の問題などがあって、公務員倫理法などが制定された頃でした。
失われた信頼を自分が取り戻すといった気持ちで公務員を志したという想いがあります。
その後、汚職のような問題は少なくなりましたが、まだまだ行政への批判というものはなくなりません。
行政の取組の失敗事例が税金の無駄遣いだと批判されることは多いです。
そういった批判をなくして、公務員が気持ちよく働ける環境を作っていきたいという想いがあって、行政関係の事業を担おうと考えているのだと思います。
行政を経験してから、民間で働いてみて思ったことですが、行政の事業は手続きが多く、手間でいうと、非常に非効率です。
事業を拡大するという点では、民間単独で動いたほうがずっと早いと思います。
では、なぜ民間は行政の事業に取り組むかというと、1つは継続性にとらわれない事業実施ができるということがあると思います。
少しややこしい言い方をしましたが、簡単にいうと、やりっぱなしの事業の舞台としては適しているからです。
行政の事業は良くも悪くも数年で終わる事業がほとんどです。
特に、新規事業関係は政治的な変化もあったりして、ずっと続けていくことはあまり想定していません。
行政側としては、行政の支援がなくなっても、その後継続する仕組みを民間が作って継続することを想定しているのですが、そこをやらなくてはいけないという縛りはかけられません。
そのため、1年、もしくは3年ぐらいやりますという計画をたてて、お金をもらえる間だけ実施して、その後はやめるといった形で実施するのであれば、大きな成果も求められず、偏った見方をすれば楽に儲けられるといえるのだと思います。
少し前向きに考えると、行政の事業は新規に市場を作るための事業がほとんどなので、初期投資の支援を行政がしているため、その後の事業化ができるかは可能性が低くて当然と言えるかもしれません。
確かに、リスクを取らずに新規事業を展開できるという点では行政の委託事業というのはありがたい存在です。
ただ、その後もその地域にコミットし続ける気があるか、委託事業終了後も本当に事業を継続する気があるかといったところは、誰にもわかりません。
行政側も民間はお金が続かなければ撤退するのは当然と思っているので、これまではあまり大きな問題にはなってきませんでした。
しかし、民間側で事業をしてみて思うのは、もう少し民間も頑張ってみても良いのではないかというところです。
そもそも、行政事業はリスクがありません。
民間が単独で行う場合は、初期にリスクをとるのに、それがなくなるので当たり前です。
行政事業は行政事業が終わってから、民間でリスクをとって、さらにチャレンジするということを前提の事業スキームにしても良いのではないかと思います。
もしくは、初期の段階から民間側でリスクを行政と分散して負担していく形が良いのではないかと思うところです。
正直なところ、民間としてはリスクを取りたくないですし、取らないで済むのであればそれで済ませたいですが、そうしないと計画を作って終わり、実証実験をして終わりとなる事業がなくならない気がします。
この点で、非常に私としては取り組みたい事業があるのですが、まだ体力がなくできないのが残念です。
大手だから継続性があるかというと、必ずしもそうではなく、どちらかというと、担当者には続ける気はあっても、事業としての成立をする実力がなくて、会社が撤退と決めてしまうみたいな状況が起きる事が多く、当初の意気込みと終わった時の成果がミスマッチで行政側の担当者も変わっていて、結局仕方ないねで終わってしまうみたいなことで済んでしまっているのではないでしょうか。
その事業の終わりをどうするか、それを考えながら事業を実施することが大切なのだなと最近はつくづく思います。
行政の事業は当初の目的を果たせば終了です。
しかし、その目的は事業の委託期間の目的であって、その先の地域にとっての本来の目的の達成まで果たした事業ができているのは、世の中にどれだけかるのか。
そのあたりが明らかにできるととても面白いのではないでしょうか。