まちづくり

ふるさと納税の中間管理事業者の選び方とその役割の方向性

ふるさと納税制度は2008年の創設以来、寄付額・参加自治体数ともに右肩上がりの成長を遂げてきました。

当初は寄付者の「想い」に応える制度として始まりましたが、今や返礼品競争・サイト対策・マーケティングといったビジネス的要素も色濃くなり、業務も複雑化しています。

このような中、自治体や地域事業者と並んで制度の一翼を担っているのが「中間管理事業者(以下、中間事業者)」です。

商品企画から物流、マーケティングまでふるさと納税における大部分の業務を担う一方で、その役割も変化が出ているのではないかと感じています。

これは、私自身が中間管理事業を担う中で感じている変化なので、中間事業者の役割というよりは、ふるさと納税事業の方向性のことかもしれません。

ポイントとしては、寄付額の最大化と地域事業者の育成の両立をどうするかという点かと思います。

ふるさと納税制度における中間管理事業者の役割とは

中間事業者は、自治体でできないこと、不得意なことを担うことが基本かと思います。

その内容は、自治体ごとに得意、不得意があるので、異なると思います。

主な業務

具体的には以下のような業務が挙げられます。

  • 商品企画・ブラッシュアップ支援:地場産品の魅力を最大限に引き出し、寄付者に訴求する企画支援。
  • 品質・在庫管理:返礼品の安定供給と品質担保を通じた自治体の信頼性維持。
  • ポータルサイトへの出品・運用:多様なポータルごとに異なる仕様に応じた対応。
  • 寄付者対応・CS管理:問い合わせやクレーム対応の窓口業務。
  • 物流の最適化:中小事業者にとって負担となる出荷対応を補完。

これらの機能を通じて、自治体と事業者の双方の業務負担を軽減し、安定した運用と成果の最大化を支援するというのが求められる役割かと思います。

中間管理事業者の3パターン

これまで、中間管理事業者は3種類に分類できると思います。

1つは、お礼状や返礼品の発送代行を請け負う存在です。

ふるさと納税導入の初期段階の自治体担当者が多くを担っていたときはこの形態が多かったのではないかと思います。

作業としての負担が多いところをお願いするといった感じですね。

ポータルサイトの担当者などが当初はこの部分も支援していました。

2つ目は、Webマーケティングや顧客対応を中心とした寄付額増額支援を行う存在です。

競争が激しく、日進月歩のノウハウが必要となる分野での支援といった形です。

「売れる」商品に優先的に広告を投入するなど、公平性を重視する自治体が苦手な分野を担う役割でもあります。

商品の差別化がしにくい生鮮食品などは、目に付く頻度を増やすことが販売に直結するため、大きく成果をあげた事例も出ています。

オンライン上で完結するため、地域外の事業者が担うということが多くなっています。

3つ目は、地域の事業者開拓、返礼品開発を行う存在です。

地域に拠点を設けて、自治体や地域事業者との連携を頻繁に行うことで、地域の力を伸ばす役割を担います。

地域の住民との関係性も構築して、地域に根ざした事業として取り組む方法になります。

事業者開拓などは自治体職員が行うことが多いので、こちらまで中間事業者に依頼しているところはまだあまり多くないのではないでしょうか。

 

冒頭で申し上げた通り、これらのうちで、どの形態を選ぶのかは自治体次第かと思います。

そもそも、すべて自治体が自ら取り組むことができます。

実際に自治体職員がほとんどを担っているところもあります。

ただ、成果を上げている自治体のほとんどはキーとなる担当者を異動させないという決断をしています。

というのも、異動をしてしまうと担当者がかわることでノウハウが引き継げないばかりか、方針自体も変更されるリスクがあるからです。

中間事業者もプロポーザルによる変更の可能性はありますし、自治体職員が変わることで、方針が変わり、中間事業者の役割自体も変化する可能性はあります。

そういう点ではどういう形態でも大きな方向性でのブレがないということが大切なのかもしれません。

地域外に再流出するお金をどうするか

1つ考えておくべきこととしては、ふるさと納税で寄付を集めても、中間事業者が地域外だと地域外にお金が再流出してしまうということです。

もちろん、地域内に担える人材がおらず、寄付額が減額してしまうのであれば本末転倒ですが、せっかく寄付を集めてもまた地域外にお金が出ていってしまうというのであれば、ふるさと納税の本来の趣旨からもずれる気がします。

ここに、ふるさと納税で何を目指すのかという選択が迫られます。

私としては、寄付額を担保するために、一定期間外部の支援を受けつつ、市内の人材が中心に担える体制を作る。

そして、地域で雇用を創出し、ノウハウを蓄積し、将来的には地域人材で自立した運営を行っていくというのが理想だと考えています。

地域の人材がいないと、中間事業者の3つ目のパターンの地域の事業者支援の部分はなかなか進みませんので、そういった点でも地域人材の育成、中間事業者の内製化というのは大切なポイントかと思います。

そうした時に、大きな問題となるのが寄付額の最大化と地域人材の育成のバランスをどうするかという点になります。

マーケティング分野での競争が激しくなり、技術的な進歩もある中で、東京でWebマーケティングを専門に取り組んでいる会社に地域の人材が対抗するのはなかなか厳しいかもしれません。

というのも、地域の人材で対抗できるのであれば、そのスキルを活かして東京の企業から仕事を取ってこられるようなWebマーケティングの産業づくりができていることになるほどすごいことだと思うからです。

ただ、それで寄付が下がっては元も子もありません。

しかし、地元の人材を育成して、地域事業者を育てていかないと長期的に見ると、商品力が下がり、寄付が伸びなくなります。

眼の前の寄付を増加を取るか、長期的な安定を取るかといった選択を迫られるわけです。

現状あまり寄付がない自治体は、選択肢は一択です。

地元の人材育成を優先しましょう。

スイッチングコストが低いうちに取り組むのがベストです。

寄付額以外の成果指標の設定をどうするか

もう1点、中間事業者の選定にあたって、寄付額以外の成果をどう評価するかという点もあると思います。

たとえば、リピート率、応援コメントの質や量、地域事業者からの反応、市民の反応などです。

これらは、長期的な寄付につながってくるもので、眼の前の寄付額としては見えにくいものになります。

同じ100万円をかけるとして、検索連動型広告にかけると、すぐに寄付として跳ね返ってきます。

一方で、地域事業者の商品開発にそれを使うとなると、商品ができて、1年後、2年後にならないと成果は見えません。

上場企業のジレンマと同じような状況に立たされている自治体もあると思います。

この対策としては、長期的な計画を立てることではないかと思います。

たとえば、3年間は事業者を育成し、4年目から成果を出すといったものにすれば、多少は議会の反応なども変わってくるのではないでしょうか。

4年後の議会の反応が怖いと言ってしまったら終わりですが、腹をくくるしかないような気がします。

もしくは、計画をつくる際にも根拠を明確にして、このような状況だから事業者育成が必要だということを伝えられれば良いのではないでしょうか。

単純に、広告費での勝負になっている業界なので、広告費にかけられない自治体は、それ以外の戦いをせざるを得ません。

そこはやはり商品開発で、特徴のある商品を出していかないといけないという論理かと思います。

なぜ、その会社を支援するのかという公平性の指摘があるかもしれませんが、そこは中間事業者をうまく使って、中間事業者が市場調査をして、伸びしろがあり、かつ意欲のある事業者を選定したということにすれば良いのではないかと思います。

ここに中間事業者を選定した一番の旨味があるのではないでしょうか。

実績のある地域外事業者か、地域内人材育成か

私は本来の趣旨を考えて、ふるさと納税は単なる財源確保策から、地域経済や人材育成を促進も含めた形へと変化していくのではないかと考えています。

一方で、自治体の委託事業であるため、自治体の意向に沿った形にすることが必要です。

ふるさと納税については、今後他の自治体の事業と同じように行政計画を作って進めていくことになるのではないでしょうか。

うまくいっている地域は良いですが、うまくいっていない地域は、成果と人材育成のバランスが偏り、負のスパイラルに陥ってしまう気がします。

成果を出すために実績のある地域外の事業者にお願いする割合、長期的に安定させるために地域内での人材育成にかける割合、そのバランスは地域ごとに異なります。

調査分析から計画づくりまで、これも中間管理事業者に求められる役割になっていくのかもしれません。

ここまでやっていけると面白いなと考えています。

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