まちづくり

地域で事業を成功させるために必要なこと ―目の前の成果を越えて、社会にインパクトを与える視点―

地域での事業づくりにおいて、「成功」とは何を意味するのでしょうか。

たとえば「1人の雇用を生み出すこと」も、大きな成果の一つかもしれません。

ですが、本当に目指すべきは「その地域がモデルとなって、他の地域へ波及的な影響を与えること」ではないでしょうか。

単発的な雇用創出であれば、自治体の委託事業でもある程度は実現可能です。

しかし、社会全体にインパクトを与える事業を目指すには、より戦略的で、長期的な視野に立った取り組みが求められます。

「やりたいこと×地域ニーズ」の重なりが成功の鍵

私がこれまで多くの地域事業を見てきた中で、成功している事業には共通点があります。

それは「自分のやりたいこと」と「地域のニーズ」がしっかりと重なっていることです。

いくら自分がやりたいことでも、地域にニーズがなければ、継続的にお金を払って利用してくれるお客さんは現れません。

また、無料だから使われるサービスでは、持続可能なビジネスにはなりません。

だからこそ、「自分はお金をもらって何をしたいのか」を明確にし、そのサービスに地域から対価が支払われる構造をつくることが非常に重要です。

「ライフスタイル起業」から始めてもよい

現在、地域で起業する多くの人が「自分が食べていける仕事をつくる」ことを目標にしています。

これは、いわゆるライフスタイル起業で、自分のペースで働き、家庭や趣味など、仕事以外の時間も大切にしたいという価値観の表れです。

これは否定されるものではありません。

ただし、もし「仕事」そのものが自分のやりたいことであれば、熱意をもって深く、広く取り組むことができ、その結果として事業が地域を超えて広がっていく可能性も高くなります。

モデル構築から展開へ:私自身の経験

私自身も、これまで「モデルとなる事業をつくること」が好きで、それに取り組んできました。

一定の評価もいただけたと自負していますが、ようやく気づきました。

「評価されて終わり」では社会的インパクトには至らない、ということです。

最近では、「モデルができたなら、それを広げる努力をしなければならない」と考えるようになりました。

正直に言えば、かつては「誰かがやってくれたらいいな」と思っていた部分でもあります。

しかし今では、「このモデル事業ができたのも多くの支援のおかげであり、自分が満足するだけでなく、その成果を還元しなければならない」という責任感が芽生えています。

自治体職員の支援の大きさ

私たちのような事業者とともに官民連携で取り組む中で、自治体職員の支援が大きかったと感じています。

特に、次の3点は行政だからこそ持つ大きな強みです。

  • 信頼:行政の信用力は絶大で、行政が関わることで事業への信頼性が一気に高まります。
  • 情報:行政には、国からの制度や支援に関する最新の情報が集まってきます。
  • ネットワーク:地域内のキーパーソンや団体とのつながりがあり、信頼ある関係性がすでに築かれています。

こういった点は、民間事業者の立場からすると、非常に大きいものです。

民間事業者はお金を要求することが多いですが、行政の予算化のハードルは高いため、それ以外の部分での協力を求めるのがポイントかと思います。

行政側としても、この情報は民間にとって役に立つのではないかと意識いただくと民間側としてはとても喜ぶと思います。

これまで経験した私の失敗パターン

もちろん、私も多くの失敗を重ねてきました。よくある失敗パターンは以下のようなものです。

  • 中核サービスが不在で、他者の誘致に依存してしまうケース→ 他者の都合や意向の変化により、事業が頓挫。
  • 協働メンバーとの関係性の変化→ 共同事業を進めていた相手が途中で離脱し、構想が実現せず。
  • コンセプトとニーズのズレ→ 想定した価格帯や内容がターゲットの実態と合わなかった。
  • 地域からの反対→ 信頼関係の構築が不十分な段階で進めてしまったことにより、地域からの理解が得られず断念。

失敗は避けられるものではありません。

しかし、それを次に活かすことで、より精度の高い再現可能なモデルがつくられていきます。

いろいろやってみるというのは大切なことですし、1度の失敗であきらめないというのも大切です。

そういう点では失敗と言っても、致命的なものでない形に留めることもポイントかもしれません。

行政課題の解決は終わらない

私が最初にこの世界に入ったのは、「目の前の行政課題を解決したい」という思いからでした。

たしかに、地域単位では成果も出ましたが、日本全国に同様の課題は山積しています。

だからこそ、モデルを他地域に展開することにより、社会全体への貢献につなげたいと考えています。

また、そうした広がりによってこそ、事業者としての信頼も高まり、より根本的な課題への取り組みの道も開けてくると信じています。

いま取り組んでいる「横展開」は、単なる拡大戦略ではなく、これからより大きな変化を生み出すための「準備」でもあると捉えています。

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