こちらをご覧いただいている方は、
- まちづくりを仕事にしたい
- 地域課題の解決を、継続できるビジネスとして成立させたい
- 補助金頼りではなく、自分たちで稼ぐ組織をつくりたい
と考えている方も多いのではないでしょうか。 一方で、
- 会社をつくるなんて、ハードルが高すぎるのでは?
- そもそも、どんな法人形態を選べばいいのかわからない
- 資金はどこから調達すればいいのか
そんな疑問を持っている方も少なくないと思います。
まちづくりの現場に関わっていると、「想いはある、動ける人もいる、でも組織がない」という状況に何度も出会います。
もちろん、組織があっても活動の実態がなければ意味がありません。
しかし、活動をしていて、そこに法人形態が加わると前に進みやすいというのも事実です。
今回は、まちづくり会社を立ち上げたい方に向けて、法人形態の選び方から設立手順、活用できる補助金まで、実務的な視点から解説します。
まちづくり会社とは何か ― その定義と役割
「まちづくり会社」という言葉に、法律上の明確な定義はありません。
一般的には、地域の活性化や課題解決を目的として設立された法人のことを指します。
行政でも、大手ディベロッパーでもなく、地域に根ざした民間の主体として、商店街の再生、空き家活用、移住促進、コミュニティ施設の運営など、さまざまな事業を担います。
重要なのは、「まちのために動く」という方向性だけでなく、それが継続できる経済的な仕組みを持っているかどうかです。
想いだけでは、組織は続きません。 まちづくり会社とは、地域への貢献と経済的な持続可能性を両立させようとする、一つの覚悟の表れでもあります。
なぜ今、まちづくり会社の設立が注目されているのか
人口減少、空き家の増加、担い手不足、公共施設の老朽化。
こうした課題が全国各地で深刻化する中、行政だけでは対応しきれない状況が生まれています。
その穴を埋める存在として、民間のまちづくり会社への期待が高まっています。
特に近年は、指定管理制度や地域再生推進法人制度など、民間が公的な役割を担うための制度が整備されてきました。
まちづくりを「ボランティア」や「行政の補助的な存在」としてではなく、正面からビジネスとして成立させる環境が、少しずつ整いつつあります。 だからこそ、今がまちづくり会社を立ち上げるタイミングとも言えます。
どの法人形態を選ぶか ― 株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人の違い
まちづくり会社を設立するにあたって、最初に直面するのが「どの法人形態を選ぶか」という問いです。
主な選択肢は、株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人の4つです。
それぞれに特徴があり、どれが「正解」かは、事業内容や地域との関係性、資金調達の方向性によって異なります。
株式会社は、信用力が高く、融資や入札において有利に働くことが多いです。
利益を出すことへの社会的な許容度も高く、事業を大きくしていく際に向いています。
一方で、設立費用がかかり、株主への説明責任も生じます。
合同会社は、設立費用が安く、意思決定がシンプルという利点があります。
ただし、知名度が低く、地域によっては理解が得にくいといった点があるかもしれません。
NPO法人は、非営利という性格から、地域住民や行政との連携においてハードルが低くなることがあります。
ただし、設立に時間がかかること、一定人数以上の役員が必要なこと。
なによりも、「非営利=稼いではいけない」という誤解を生みやすい点に注意が必要です。
NPO法人でも、事業収益を上げることは可能です。
一般社団法人は、設立しやすく、公益的な印象を持たれやすいという特徴があります。
行政との協働事業でも選ばれやすい形態ですが、株式会社のようにエクイティでの資金調達は難しく、規模を大きくしていく際には注意が必要です。
非営利型の社団法人という形態も取ることができます。
行政との連携を前提とするなら、一般社団法人かNPO法人が選ばれることが多いです。
ただ、非営利型の法人だと事業者支援系の補助金が対象外となることも多いです。
ビジネスとしての拡張性や信用力を重視するなら、株式会社が有利かと思います。
まちづくり会社を設立する前に決めておくべきこと
法人の器を整える前に、もっと重要なことがあります。
それは、何のために、誰と、何をするのかを明確にすることです。
設立前に曖昧なまま進むと、定款の記載に迷い、補助金の申請先が絞れず、メンバー間でのすれ違いが生じます。
最低限、以下の3つは固めておく必要があります。
事業内容:何で稼ぐのか。指定管理、コンサルティング、不動産活用、イベント運営など、収益の柱を明確にしておくことが大切です。
「地域のために何でもやる」という姿勢は、地域に歓迎されますが、その運用には一定の経験が求められます。
資金:設立費用だけでなく、最初の1〜2年間は収益が安定しないケースが多いです。
どこから資金を調達するのか、いつまでに黒字化するのかをあらかじめ想定しておく必要があります。
メンバー:一人でできることには限界があります。事業を動かすための人材と、意思決定を共にできるパートナーの存在は大切です。
設立の手順と必要書類 ― 法人登記の流れ
ここでは株式会社を例に、設立の流れを簡単に説明します。
まず、定款の作成と認証が必要です。
定款には、会社の目的、商号、本店所在地、出資金、役員などを記載します。 公証役場での認証が必要であり、電子定款を使えば収入印紙代を節約することができます。
次に、資本金の払い込みを行います。発起人の口座に出資金を振り込み、通帳のコピーやキャプチャー画面を証拠として保管します。
資本金は1円から設立できますが、取引先や金融機関からの信用を考えると、100万円以上を目安にする場合が多いです。
その後、法務局への登記申請を行います。
登記申請書、定款、印鑑証明書などの書類を揃えて提出します。
登記が完了すれば、法人として正式に活動を開始することができます。
設立にかかる費用の目安は、株式会社(20万円程度)、一般社団法人(11〜16万円程度)、合同会社(6〜10万円程度)、NPO法人(1〜3万円程度)といった順になります。
まちづくり会社が活用できる補助金・助成金
まちづくり会社を運営する中で、「補助金」をあてにするのは危険です。
補助金があるから事業ができるという状況は、補助金がなくなった瞬間に続かないからです。
ただ、事業をしていく中で活用できるものは活用していくというのも大切かと思います。
地方創生推進交付金は、地域の自立的・継続的な発展を目指す取り組みに対して交付される国の制度です。
自治体を通じて申請するため、行政との連携が前提となり、議会の承認も必要です。
交付金事業はその自治体の目玉となる事業であることが多いので、ハードルはかなり高いと思います。
中小企業庁の創業補助金・小規模事業者持続化補助金は、新たに事業を始める際や、販路開拓・マーケティングに活用できます。
まちづくりの文脈でも、要件を満たせば申請可能です。
その他、都道府県・市区町村の独自補助金もある場合があります。地域やその時々で内容が異なります。
UIJターン起業支援、空き家活用補助、地域おこし協力隊との連携事業など、地域ならではの制度が存在することがあります。
自治体のホームページには掲載されているので、確認してみるのが良いかと思います。
補助金申請で採択されるためには、「事業の目的が明確であること」「地域ニーズ、収益化の見通しが立っていること」「地域への波及効果が具体的に示されていること」の3点が重要です。
そして最も大切なことは、補助金がなくなった後も事業が続く設計になっているかどうかです。
補助金はあくまで「スタートダッシュのための燃料」であり、継続してもらえることを期待するものではありません。
軌道に乗せるための収益モデルをどう設計するか
まちづくり会社が継続的に活動するためには、収益の柱を複数持つことが重要です。
多くのまちづくり会社が採用しているのは、指定管理・業務委託・自主事業の3本柱という構造です。
指定管理や業務委託は、安定した収入の基盤になります。
一方で、自治体の都合による変更リスクも伴います。
そのリスクを補うのが、自分たちで企画・運営する自主事業です。
自主事業は利益率が高い反面、集客や収益化に時間がかかることが多いです。
立ち上げ期は、指定管理や委託で基盤をつくりながら、少しずつ自主事業の比率を高めていくというステップが現実的です。
また、行政との契約を取りにいくためには、「実績」が必要です。
最初は小さくても、まずは一つの事業を完結させ、その成果を可視化することが、次の仕事につながります。
成功しているまちづくり会社の共通点
全国のまちづくり会社の事例を見ると、成功している組織にはいくつかの共通点があります。
一つは、地域に深く根ざしていることです。
外から入った組織より、地元との信頼関係を持つ団体の方が、行政からも住民からも選ばれやすい傾向があります。
もう一つは、「稼ぐ」ことへの覚悟があることです。
まちのためになりたいという想いは大切です。
しかし、稼ぐことへの後ろめたさを持ったままでは、組織は大きくなれません。
そして、長く続けることを前提にした設計がされていることです。
補助金が終わったら解散、というモデルではなく、事業が自走する仕組みをつくることを最初から意識している組織が、結果として地域に残り続けています。
まとめ ― 今日からできる最初の一歩
まちづくり会社の設立は、決して難しいことではありません。
器(法人)をつくることよりも、その器に何を入れるかの方がはるかに重要です。
まず、自分たちが何で稼ぐのかを明確にする。地域でどんな信頼を築けるかを考える。
その上で、最も適した法人形態を選ぶ。
この順番を間違えなければ、まちづくり会社は十分に成立します。
まちづくりをビジネスとして継続させたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。