生涯活躍のまちのミスマッチは、サービス付き高齢者向け住宅への移住を実現したい行政とサービスを必要としないアクティブシニアというギャップにあるのは常々述べていることです。
そこで、その溝を埋めようと、サービスの内容を安否確認、生活相談ではなく、仕事やコミュニティといった部分にするという取り組みをこれまでは行ってきました。
しかし、今回、ここでそれは誤りだったと認めざるを得ません。
というのも、サービス付き高齢者向け住宅の部屋の大きさ、住宅の値段と移住希望者の希望する部屋の大きさ、住宅の値段にもギャップが存在し、結局そこを埋めるのは想定以上に難しいことがわかったからです。
この誤りの原因について、今回は明らかにしたいと思います。
ゆいま~る那須の解釈の誤解
もともと、アメリカのCCRCを日本でといったときに視察に来たのがゆいま~る那須でした。
サービス付き高齢者向け住宅にアクティブシニアが首都圏から移住している。
この事実だけを見ると、生涯活躍のまちを合致しているように見えます。
しかし、実際、ゆいま~る那須の開発の段階で現場の声を聞いてみると、移住を目指した取り組みをしていたわけではありません。
自分たちが安心して暮らせる終の棲家をつくろうと考えた結果が那須という地方だったということでした。
ここで重要なのは、移住は結果であって、目的ではないということです。
なぜ、このような目的と結果の逆転が起きたのか。
この原因はわかっていることですが、明らかにしても何も良いことはありません。
大切なのは、移住が目的となった生涯活躍のまちが実施されていたということですね。
これを解決するには、改めて自分が住みたい環境をつくるという目的を認識し、そこをターゲットとした取り組みを行う必要があるのではないかと思います。
そして、その入り口はサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームを探している人がメインターゲットになるのではないかというのが私の考えです。
入口へアクセスするにはどうするか
では、そのようなターゲットにアクセスするにはどうしたら良いでしょうか。
建物がすでにあるのであれば、既存の老人ホームのポータルサイトへの掲載が一番の近道ではないかと思います。
これは従来型の老人ホームと同じリーチの方法ですね。
この方法だと、入居をした本人からの問い合わせはもちろんですが、入居をさせたい親を持つ子ども世代からも問合せが来ます。
建物ができていない段階では、終の棲家をつくるといった観点でのセミナーや勉強会を開くという方法になると思います。
この方法については、大手がことごとく行っていない通り、費用対効果としてはかなり悪いものになります。
特に住宅1棟のためだけに実施するといった場合は参加者の選択肢が1つしかないため、コーポラティブハウスをたてるといった所得の高い層でないとビジネスとしては難しいと思います。
だからこそ、ふるさと回帰支援センターのような場所が求められるわけですね。
ただ、ふるさと回帰支援センターに来る移住希望のシニアはサービスは不要なので、少し違った観点での拠点が必要になると思います。
そして、そこを担える場所というのはまだなさそうです。
シニア移住者がサ高住に入居するには
では、どうしたらアクティブシニアがサ高住に移住するのでしょうか。
1つは、サービス費も含めて低価格で提供することだと思います。
たとえば、50㎡家賃月5万円というのが平均相場だとすると、50㎡5万円でサービス費込のサ高住をつくるということですね。
これがどこまで上積みされても許容されるかはまだ私もはっきりわかっていませんが、5千円~1万円程度であれば許容範囲内かもしれません。
これについては、グレードが高いものを割安に提供するといったものも含めても良いと思います。
本来であれば月7万円程度のグレードの建物にサービス費込で7万円で住めるといったものです。
これは資金があればなんとかなるもので、生涯活躍のまちでなくてもできてしまうことかもしれません。
もう1つは、サービス費に見合う取り組みを行うことだと思います。
ホシノマチ団地では、移住者がスタッフにという考え方で、サービス費以上のお金を稼ぐ仕組みが導入されています。
また、ホシノマチ団地をプラットフォームとして、移住者である住民がさまざまな取り組みを行っていくことで、充実した地域での生活を送ることができるといった部分もあります。
特に移住する前からコミュニティを形成していて、その人たちと一緒に移住という形ができれば、移住後のストレスも少なく、スムーズな移住が実現できるはずです。
3つめは、サ高住の住まいを中心としたコンセプトづくりをして、それに共感した人たちに入ってもらうといった形です。
コーポラティブ型といって良いでしょう。
これについては、特に新築タイプが合致していて、新たな土地で、新たな建物を自分たちが希望した通りにというものができれば、移住前から入居をしたいという人たちが集まるはずです。
これは初期投資がかなり大きくなるため、民間ではなかなか難しい取り組みになると思います。
しかし、地域に魅力を感じる人たちはサ高住を選ばないため、サ高住自体の魅力の向上に努めるしかないのではないかと考えています。
地方創生が第2期に入り、全世代型の取り組みとなっているところではありますが、アクティブシニアの移住政策は有効な取り組みだと考えています。
それを実現するための手段を引き続き検討、実現していきたいと思います。