指定管理制度が導入されてから20年あまり。
多くの自治体施設が民間や非営利組織に管理運営を委託され、一定の成果を上げてきました。
しかし一方で、指定管理料に依存した運営モデルが制度開始当初から大きく変化していない現状もあります。
人口減少、税収減、公共施設の老朽化――。自治体財政の逼迫が進む中、「これからも同じ運営を続けていていいのか?」と考えている自治体職員の方はいないのではないでしょうか。
できるだけ、財政負担を減らす形にしていきたい。
それが共通の思いかと思います。
私たちは、その問いに対し、次のような4つのステップで答えを出してきました。
ステップ1:指定管理料の中で成果を出す
まずは、指定管理料に見合う成果を上げることが基本です。
- 利用者数の増加
- 利用満足度の向上
- 地域との連携による波及効果
の3点がポイントとなるのではないかと思います。
所為段階では、指定管理施設が「選ばれる施設」となる土台を築きます。
指定管理を受けた第1タームで目指す部分かと思います。
ステップ2:自主事業を増やして指定管理料を下げる
次に取り組むのが、自主事業による収益の確保です。
施設の特性を活かし、地域ニーズに応える企画を行うことで、指定管理料の一部を代替できる状態を目指します。
例:講座の開催、物販やカフェ、イベントの収益化、宿泊体験など
温泉施設など、もともと利用者負担の中で運営していく性質が強いものは、この段階で指定管理料をもらわずに運営することができるようになるのではないかと思います。
ただ、それだとまだまだ本来の民間のあり方とは異なりますので、その先を目指していく必要があります。
ステップ3:施設運営の効率化で指定管理料を下げる
業務フローの見直し、ICTの活用、外部人材との連携などにより、運営コストそのものを見直します。
必要最小限のコストで最大の成果を生み出す運営体制を構築することで、さらに指定管理料の縮小が可能になります。
IT化などは、初期投資がかかるので、行政側の理解が得られるのであれば、指定管理料の中からそれを出すというのもあるかと思います。
ただ、その際には一度下がった指定管理料は上げにくいという性質があると思うので、先々のシステムの更新などのことも考えておく必要があるかと思います。
ステップ4:施設以外の収益事業で指定管理料をゼロに
さらに一歩進んで、施設外での収益事業を行い、その利益を施設運営に充てることで、指定管理料ゼロでの運営も視野に入れることができます。
施設での講座がうまくいくようになったら、まちなかで店舗を借りて、そこで講座を運営してみる。
宿泊体験がうまくいくようだったら、物件を借りて民泊をやってみるといった形です。
ここが充実してくると、指定管理施設は新たな取組を行う場、地域の新たなニーズを発掘する場。
民間施設として、すでに育ったニーズを継続していく場といった役割分担ができていくのではないかと思います。
最終的に目指す姿
指定管理料がかからなくなった際に、目指す方向性としては2つかと思います。
1つは、指定管理の制度を外して、普通財産として行政へお金を払って施設を借り、活用していく方法。
行政としては、本来の指定管理の趣旨の事業がある程度実施されるだけでなく、赤字施設が黒字施設に変わり、新たな収入を得られるようになります。
もう1つは、指定管理施設のまま、無人運営をするような、市民の主体的な運営によって、指定管理者の役割を限りなくゼロにしていく形です。
民間に運営を任せるのであれば、毎年そこで働くスタッフの給与は上げるのが普通かと思います。
一方で指定管理料は下がる。
そうなると、指定管理施設に関わる人の割合はどんどん減らして、収益事業に力を入れていくことになります。
本来の指定管理の趣旨から外れた施設運営になってしまっては本末転倒ですが、その趣旨を果たせる範囲で人的関与は減っていくことになるのではないでしょうか。
そうしないと、いつか企業努力は限界に達して、人件費の上昇に耐えられなくなるので、再び指定管理料を受ける形になってくるかと思います。
もしくは、雇用していた人を新人に変えるなど、運営の質が一時的に下がる選択をすることになるのではないでしょうか。
これまで、市場性がなく民間が行わないことを行政が行ってきました。
しかし、経済が成長し、福祉が手厚くなる中で、民間で担えることも行政で担うという部分も出てきたのではないかと思います。
指定管理は、民間で収益化して担うことができるかというのを試す場で、市場性があって、担えると実証できれば民間に任せてしまう。
そういった将来を考えながらの運営ができると良いと思いますし、それを本気で目指す民間がもっと増えると良いと思っています。