まちづくり

なぜ「行政と市民・民間企業をつなぐ組織」が今、必要なのか?

近年、まちづくり会社と言われるような「行政と市民、民間企業をつなぐ中間支援的な組織」の存在がたくさん立ち上げられています。

まちづくり、地域福祉、教育、防災など、行政が関与するあらゆる分野において、こうした組織が果たす役割は年々大きくなっています。

以前、私が関わる一般社団法人まちのtoolboxの活動紹介の講演をした際に、質問者から「それは行政が担うべきことだ」という発言がされたことがあります。

行政が担うのがベストではありますが、行政は制度的に公平性、中立性を重視すること、そのために単年度予算で、定期的な人事異動があり、権限が担当部署ごとに明確に分かれる縦割りといった特徴を持っています。

そのため、制度的に苦手とするというのも事実です。

今回は、あらためて「なぜつなぐ組織が必要なのか」、その理由と可能性について整理してみたいと思います。

1.行政のルールと民間の感覚のギャップ

まず最初に立ちはだかるのが、行政の制度やルールが民間には分かりづらいという現実です。

助成金や委託事業ひとつ取っても、「応募の仕方が分からない」「報告書の形式が難しい」など、民間側の戸惑いは多く、結果的にコミュニケーションの齟齬が生まれやすくなります。

「間に立つ組織」は、行政側のルールを理解しつつ、民間の現場の言葉に翻訳することができます。

言葉や文化の“通訳者”としての機能が期待されています。

2.行政が発言しづらい「距離感」を補う存在

自治体職員の言葉は、個人の発言であっても“公的な見解”と捉えられやすいため、慎重にならざるを得ません。

対話が重要と分かっていても、「直接言うと誤解を招きそうだ」「市民の反応が読めない」などの懸念は少なくありません。

そこで、中間組織がクッション役として入ることで、双方にとって柔らかいコミュニケーションが可能になります。

言いづらいことを代弁したり、反応を見ながら調整したり、対話の土壌を耕す役割を担うのです。

3.縦割り構造や予算の制約を超える柔軟性

自治体内部ではどうしても縦割りの構造が強く、部局を超えて横断的に動くことが難しい場面があります。

また、単年度予算の枠組みでは、数年かけて取り組むべき事業の実施や突発的な対応も難しくなりがちです。

中間組織は、そうした行政の制約を補完し、事業の継続性や柔軟性を担保する存在になり得ます。

行政にとっての「外部の手足」として、変化の激しい現場を機動的に動くことが可能です。

4.ノウハウとネットワークの継承を支える

もうひとつの課題は、定期的な人事異動によるノウハウやネットワークの継承の難しさです。

せっかく築いた関係性や知見が、数年でリセットされてしまうことも珍しくありません。

つなぐ組織がそこに関与していれば、現場の知見や地域のプレイヤーとの関係性が継続的に保たれることになります。行政内の“記憶”を補完する外部の“知恵袋”として機能します。

5.行政に期待される「スピード感」と「営業力」の補完

「行政はスピード感がない」「外に営業しない」――こうした批判があることも事実です。

これらは組織の性質上、ある程度避けられない側面もあります。

そこで民間的な視点や機動力をもつつなぐ組織が、地域外への情報発信や資金獲得の営業活動を担うことで、行政では補えない役割を果たすことができます。

6.“ハード”は整っても“ソフト”の運営は難しい

近年、公共空間のリノベーションや地域施設の整備が進む中で、「ハードは整っても、その中身の運営が難しい」という声をよく耳にします。

運営は人が行うもの。ノウハウやネットワークの一定部分は人についてくるという現実があるからです。

つなぐ組織は、その運営の担い手となると同時に、地域内に運営スキルや仕組みを根づかせていく役割も担います。

7.地域経済の担い手としても

さらに重要なのが、つなぐ組織が地域内の経済循環や地域外からの収益獲得(外貨獲得)にも関与できるという点です。

行政が担いにくい営利的な活動や広域的な展開も、中間的な立場の組織であれば可能になります。

そしてその成果が地域に還元されることで、地域外での活躍が評判の逆輸入となり、結果的に地域の誇りへとつながっていくのではないでしょうか。

明確なリーダーシップが必要

「つなぐ組織」は、単なる便利屋ではなく、行政と市民・民間の間を取り持ち、地域の未来を共に描くパートナーです。

自治体が抱える構造的な課題を補い、より柔軟で持続可能な地域づくりを可能にする存在として、今後ますますその役割は重要になっていくでしょう。

行政と民間、そして市民の間に、もうひとつの道をつくる。

そういった役割を担う立場だからこそ、明確な理念、目指したい社会のあり方を持つ必要がありますし、行政も巻き込むリーダーシップが求められます。

その担い手をどのように発掘し、育て、関係を築いていくかが、これからの自治体運営の鍵になってくるような気がします。

なかなか地域にはいないよという方もいらっしゃるかもしれません。

でも、地域にはちょっと変わっているけど、地域で熱心に取り組んでいる人がいませんか。

最近地域に入ってきたばかりだけど、熱量のある人はいませんか。

ちょっと変わっていて、コミュニケーションが難しそう。

熱量はあるけど、来たばかりだからいつまで続くかわからない。

そういった不安はあると思います。

正式な形で動くとなると不安かと思うので、まずは非公式にそういった方々とコンタクトをとることからスタートしてみてはいかがでしょうか。

新しいことに取り組むので、必ず波風は立ちます。

しかし、その先には新たな世界が待っているはずです。

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