地方で事業を成功させるためには、
ノウハウと担い手の存在が欠かせません。
これまで多くの地域では、ノウハウや人材を東京など外部の組織に頼る形で事業が進められてきました。
専門性を持つ外部人材を活用すること自体は、決して間違いではありません。
しかし一方で、「それでも成果が出ない」「持続しない」という声が、地方創生の現場で多く聞かれるようになりました。
なぜ、成果が残らないのかその理由の一つは、外部組織は撤退しても、地域の信用を失わないという構造にあります。
事業がうまくいかなかった場合でも、地域に住み続けるのは地元事業者や行政職員です。
外部組織は次の案件へ移ることができる一方で、地域側には「失敗の後始末」だけが残ることも少なくありません。
また、仮に事業がうまくいったとしても、ノウハウが地域に蓄積されなければ、次もまた外部に頼らざるを得なくなります。
その結果、外部を誘致し続けなければ成り立たない地域になってしまうのです。
次のステップは「地域内で担い手を育てること」
では、次に目指すべきステップは何か。
それは、地域内で地域の担い手を育てていくことだと私たちは考えています。
最近では、外部企業が地域に事業所を設けるケースも増えてきました。
ただ、その場合でも人材は外部から来ていることが多く、地域の人材育成にはつながりにくいのが実情です。
本当に目指すべきは、地域人材を育てその人材が担える地域事業を増やしていくことだと思います。
行政が「事業を担いにくい」理由
ここで重要なのが、行政の役割です。
行政には、行政の得意分野と不得意分野があります。
事業を「継続的に担う」という点については、
制度上どうしても難しさを抱えています。
行政が継続事業を行いにくい理由
1.制度的に継続しにくい
- 人事異動による人的な断絶
- 単年度予算による金銭的な断絶
- 縦割り行政による組織的な断絶
2.非効率になりがちな運営構造
- 前例踏襲になりやすい
- スピードが求められにくい
- 受け身になりがちで、営業に出られない
- データに弱い
これは、「行政職員が悪い」という話ではありません。
公平性を重視する仕組みの中で生じる、構造的な課題です。
だからこそ、この弊害をきちんと認識した上で、行政にできない部分を誰が担うのかが問われます。
行政と民間をつなぐ「地域の担い手」
行政の苦手な部分を補い、地域の担い手を育てていく。
その先に、行政と民間をつなぐまちづくり法人が生まれてくるのだと思います。
行政と民間では、使っている言語も、意思決定のスピードも違います。
その「翻訳」ができる存在がいることで、地域の機動力は大きく高まります。
ただし、法人をつくること自体が目的になってはいけません。
箱だけをつくっても、うまくはいかない。
本当に大切なのは、誰が担うのかどんな想いで運営するのかです。
想いを持たずに形だけを整えても、地域に根付くことはありません。
その地域で、ずっと取り組み続けるという固い意志を持った人によって担われてこそ、
地域力は少しずつ育っていくのだと思います。
担い手はどうやって育てていくのか。そもそも、どんな人が担い手になり得るのか。
担い手の育て方①「見つけ方」
担い手育成で、最も理想的なのはすでに一定の資質を持っている人を見つけることだと思います。
では、その「資質」とは何でしょうか。
私たちは、大きく分けて「想い」と「スキル」の2つが必要だと考えています。
想い:地域から逃げないという覚悟
まず大切なのは「想い」です。
ここで言う想いとは、地域から逃げない、地域とともにあり続けるという意識です。
地域に愛着がなければ、うまくいかなければ撤退すればいい、という判断になりがちです。
しかし、まちづくりは継続してこそ意味がある取り組みです。
途中で終わってしまっては、地域には何も残りません。
もう一つ大切なのが、ビジネスとして継続する意識です。
行政や補助金、税金に依存し続けない。
これは言葉で言うほど簡単なことではありません。
多くの市民が「行政にやってもらう」という要求型の意識を持つ中で、自分たちで稼ぎ、回し、責任を持つ姿勢を保ち続けるのは、なかなか大変かと思います。
税金に頼れば、短期的には楽ができます。
ただ、楽な方に流れていくと、長い目で見て地域にとって良い結果にはなりません。
この点を理解し、あえて厳しい道を選び続けられるかというのは、担い手にとって非常に重要な資質だと思います。
スキル:新規事業を生み出し、続ける力
もう一つが「スキル」です。
スキルは後から身につけることができますが、最低限必要なのは新規事業を創出する力だと思います。
突き詰めると、これはとにかく行動する、失敗する、それでも続けるという力に集約されます。
諦めずにやり続けること。
そして、感覚だけでなく、論理的に振り返り、改善しながら進めること。
この積み重ねができるかどうかが、地域で事業を担えるかどうかの分かれ目になります。
担い手の育て方②「育て方」
次に、育て方についてです。
担い手は、業務をお願いする、雇用するといった実務の中で育っていくものだと考えています。
単に事業を回すだけでなく、成果を出し、さらに事業を拡大していく力を身につけていくことがポイントです。
ここで注意が必要なのは、事業を拡大する=売上・利益の最大化だけを目指してしまうことです。
売上や利益だけを追求すると、「それなら東京の方が儲かるよね」という話になりがちです。
地域で事業を行う以上、地域への貢献、社会的なインパクトといった視点を、常にセットで持ち続ける必要があります。
挑戦と失敗の「量」を用意する
担い手育成で重要なのは、挑戦し、失敗する機会を数多く提供し続けることです。
失敗を避ける環境では、人は育ちません。
挑戦 → 失敗 → 学習を繰り返す中でスキルが身につき、同時にマインドセットも共有されていきます。
最も大切なのは「時間軸」
そして、最も大切なのはここかもしれません。
すぐに成果が出ると思わないこと。
担い手育成には、5年、10年という時間がかかります。
どうしても目の前の成果に目が行きがちですが、人材育成は短期成果を求められる事業とは、正直言って相性が良くありません。
だからこそ、どの事業を選ぶのかという点も非常に重要になります。
これは、いわゆる理念経営の話だと思います。
まちづくりの分野においても、この理念経営的な視点は、これからますます重要になっていくと感じています。