2000年頃から移住の取り組みが各自治体で展開されてきました。
最初は若い世代を移住させたいと思って取り組みますが、仕事がないと移住は難しいとわかります。
それでは年金のある高齢者だということで、2015年頃から生涯活躍のまち(日本版CCRC)が進みましたが、年金も十分でないため、実現が困難といわれました。
コロナになって、リモートワークが普及したため、地方に仕事がなくても移住ができるようになりました。
コロナ直後は密を避けるために地方への移住関心が高まったということもあります。
そういう点で、移住ができる環境は整っていると言えます。
しかし、2015年当初の若い世代の移住は困難という経験から、関係人口ということが言われ、移住はすぐには無理なので、まずは関係人口を増やそうということで今に至っています。
最近では二拠点居住の推進に力が入れられています。
しかし、ホシノマチ団地は若い世代の移住が実現できています。
その理由は、
- ターゲッティング
- 移住の不安解消の取り組み不足
の2点に尽きます。
ターゲッティング
まず、ターゲッティングについてです。
漠然と移住に関心がある人たちを呼ぼうと思っても、なかなか移住にはつながりません。
短くても数ヶ月、長いと数年という方が多いです。
実際、ホシノマチ団地でも2〜3年越しに転居いただいた方もいます。
それはそれでうれしいことですが、もっとすぐに移住したいという人たちがいる中で、そのターゲットがズレていたというのが反省でもありました。
移住したいという人はいます。
しかも、できるだけすぐに移住したいという人たちです。
そこにアプローチできていないのが問題なだけですね。
移住の不安の解消
そして、その層にリーチするためには、セットで次の移住の不安解消の取り組みも必要となります。
なぜなら、移住が実現しない理由のほとんどは不安からだからです。
移住の三大不安要素は住まい、仕事、コミュニティの3つです。
これを解決する取り組みを実施すれば移住したい人たちにとってはとてもありがたいことかと思います。
どの地域も自分たちの地域の魅力はPRしているのですが、不安を解消する取り組みができていないんですね。
その理由は、自治体ではできないからです。
解消しようとさまざまな取組は行っていますが、紹介しかできず、実際の不安の解消の実業ができないからですね。
本当に移住者が不安に思っていることを解消しようという取り組みを実施するには、手間がかかりますし、これまでの事業で十分うまくいっている民間は手を出すメリットがありません。
そこを行政が担おうと思っても、人と人が関係するコミュニケーション、信頼関係の事柄になるため、異動があるたびに人間関係を構築しないといけない公務員では非効率です。
民間が担わなくては成り立たないけど、民間が担おうとしない。そこを私たちが取り組んでいると言えます。
もう1つ、ハード的な問題もあります。
不安解消の取り組みの1つとして、ホシノマチ団地は移住者専用住宅とすることで、その不安を解消したわけですが、地方で民間のアパートで空室が大量にあるという状況はほとんど考えられません。
理由は、空室が続いていれば経営が成り立たないからです。
空き家はたくさんありますが、アパートのように収入源として利用している人たちが所有しているわけではないため、活用にはつながっていません。
そのため、活用できるのは公営住宅となります。
もしくは、企業が所有している社員寮なども可能性はあると思います。
ホシノマチ団地の事業が横展開できるのではないかと見られているのは、この地方には空室を大量に抱える団地(住宅群)が行政しかないということが大きなポイントかと思います。
今回、国土交通省のまちづくりアワードや地域価値を共創する不動産アワードで受賞をさせていただいて、先進的な事例であり、かつ横展開が可能ということで評価もいただいたところです。
全国の自治体で空室を抱える公営住宅があれば、ぜひ活用させていただきたいと考えています。
自治体としては、管理運営のコストがかからなくなりますし、人も増え、消費も増え、地域活動も増えるという良いことづくめの事業かと思っています。
それを伝えても、これまでは怪しいみたいになっていましたが、国土交通省のアワードをダブルで受賞できたというのは信頼につながるのではないかと期待しています。